競合相手が低価格競争を仕掛けると…

 授業では価格競争に巻き込まれないように、いかに差別化を図るか、ということを、独占的競争の領域にて説明します。ディスカウンターが市場に存在すると、その産業は全体として利益の確保が非常に厳しいものになるからです。

 懐かしい話になりますが、私の修士課程時代(1997年〜1999年)での学位論文は、情報化の進展に伴った証券業界の変革に関する提言でした。インターネットの普及と金融の自由化により、証券業界のリテイル部門における注文取次委託業務に係るコストが大幅にダウンし、その結果日本の証券会社はディスカウンターが中心になるだろうという内容を記載しました。当時はインターネットが日本の家庭において、ようやく普及し始めた頃です。

 米国における金融自由化ではディスカウンターと富裕層を対象にした資産管理業務にシフトする会社に分かれ、上手く棲み分けを行いました。これは既に先行論文にて、2つの要素からなる4マトリックスにより説明されていたのですが、日本の場合は文化的側面と情報化の進展による環境変化から、米国と同様にはならないというのが私が記載した内容です。そのうえで収益源の多様化を内容とするビジネスモデルの変革を提言しました。

 結果として、2000年に入りITバブルが起こったものの、日本の証券業界はディスカウンター委託売買市場の出来高の大半を占めたことから、私の書いた内容の通りになってしまいました。そして2011年現在、収益源の多様化は進行したものの、未だに証券業界はこの低価格競争に苦しむこととなっています。

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 博士論文では、証券業界から中小・ベンチャー企業の財務戦略に焦点を移したのですが、今になってこの懐かしい論文を思い出しました。

 これを思い出した理由は、昨日記載した入札のゲームの結果を分析していたことによります。

 数は商材Cにおける仕入れと販売の双方における応札状況とその金額を一覧にしたものです。

 
 (左側は仕入フェーズ、在庫は20個なので結構余裕ですが、右側の販売フェーズでは、多くのチームが30000$以上の価格を提示する中、XとYの2チームが低価格で仕掛けてきて、落札に成功しています。)

 チームYについては「ゴルァッ〜!」といいたくなるような行動をしていますが(仕入価格より販売価格が安いってどういうことやねん…笑)、チームXにおいては薄利ながら見事に入札を成功させ、他の商材でも同様に成功し、結果として全利益合計は今回のチーム中でトップになっています。

 ゲームの中でも現実世界と同様に低価格競争をしかけるものなんだなぁと、少し感心しました^^

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 いつの間にかパキラがかなり成長しました。

 
 (7月20日のパキラ)

 3か月前は葉が2か所しかなかった状態(リンク)を思い出すと、こちらも懐かしいです^^

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 もしやチームYは現在の一部産業分野における日本の競争入札の現状を知っていたのかもしれません。数ヶ月前、当地で最大規模の会社の方とお話していた時、「近頃の入札では、全国規模の大手企業が赤字の金額でも入札してきて、当面の資金の確保に動いている。困ったものだ。」とおっしゃっていました。

 しかしこのゲームの場合、資金繰りどうこうは関係なく、利益を出さなければ評価しないのですが…。