The eagerness to buy depens on the discount rate. - 購買意欲は割引率によって決まる…と思う。


京都大学11月祭にて。某コンテストで講演のために来ました。11月は毎週末と全ての祝日に何らかの予定が入っていました。)

 当地でも地産品の購入が30%オフになる「ふるさと割」があります。これまでは利用しようと思いつつ、購入の手続きを調べるのが面倒で、普通に定価で買っていました。そのようなわけで「『ふるさと割』って効果があるの?」と、いまひとつ実感がわかなかったのですが、先日思わず静岡県のブランド果物をネットで見て、「30%オフ」に惹かれ、プチッと購入してしまいました。効果ありますね(笑)

 このような現象を、行動経済学ではアンカリング効果(Anchoring Effect)といいます。元の提示された数値(定価やこれまでの価格)が印象に残り、それが基準となって、次に新たに提示された数字(「30%オフ」や「新価格」)を見ると、「安い、お買い得」という判断をしてしまう心理効果をいいます。まさにアンカー(基準点)ですね。

 私の場合は、普段からその果物は5,000円ぐらいとわかっていたので、余計に3,500円で買えるとわかると、次の瞬間にはクリックしてしまっていました。極めつけは「送料無料」の文字でした。実際にはブツが移動する以上、送料自体が無料ということはありえないわけで、価格に含まれているのですけどね…。正確には「送料は販売店持ち」とか「送料は価格に含まれている」と書くべきで、「送料無料」というのは、どうも釈然としませんが、そういう私も引っかかっているわけです。

 金太郎飴のようにほぼ全国一律で行われた地域振興券が一段落したと思えば、まだ消費者心理を利用した政策が続いていますね。それで地域経済が活性化するなら、良いことだとは思いますが。

 地域振興券政策(プレミアム商品券)は当地では終わったようです。実は私も購入したのでその効果の実感について、少しだけ振り返ってみます。人によっては「政治家の人気取りのバラマキで、実際には効果がない」「消費の反動で、悪い影響が出るだけ」などという人もいるようですが、効果の有無は次のような見方により変わります。

 地域振興券で、普段購入している財(必需品)を、いつもの店で購入していれば、その政策は確かにプレミアム分(当地では1万円が1万2千円になるのでプレミアムは20%)のバラマキに終わり、政策の失敗でしょう。しかし例えば、普段は市外に働きに出ている等の理由で市外で買い物をしていたのに、地域振興券を使う目的で市内で購入するという風に行動が変われば、地域内消費という意味で効果があります。…①

 また、地域振興券にプレミアムがあるという理由で、2千円分の所得効果が働き、普段購入しないような財(例えば嗜好品)を購入すれば、やはり新たな消費喚起という意味で効果があります。…②

 一方で、効果の有無について、次のような見方もできます。小規模店に限定の地域振興券がありますが、これは小規模店の保護政策という効果を生む反面、産業の新陳代謝を阻害する非効率な産業保護と考える見方もあります。またもちろんドイツの「閉店法」をはじめ、ヨーロッパでとられている小規模店保護政策も賛否両論があります。

 しかし経済の効率性は多くの場合、規模の効果を伴い、多数の小規模店から特定の大規模店へ、という流れを作りかねません。

 少なくとも今回の政策が地方創生であるならば、採算が取れないという理由で小規模店でさえ撤退を余儀なくされる地方や少人数集落において、地域内消費の促進とあわせつつ小規模店を存続させるという意図では、小規模店限定の地域振興券は高い効果を生みますね。…③

 今回の福井市地域振興券の場合、私は実際に②と③の行動をとりましたので、政策はうまくいった(乗せられた(笑))ようです。ともあれ、普段、身のまわりで実施されている施策について、自分の行動を顧みながら検証するのも、結構面白いですよ。

    
 (しろたん、こたつで「ぬくぬく」ですね。あさらしは寒いところが好きなのでは?)

 さて、12月です。11月は、全ての週末と祝日を、JST関連のパネル討論、放送大学の面接授業、本学の公開講座、京大での講演、本学で学会開催など、何らかのイベントが入り、お休みを取らなかったのが祟りました。私にしては珍しく体調を崩しかけましたので、この12月は少し体を大切にしようと思います。

    
 (JSTのパネル討論はサイエンスアゴラの中で行われました。科学技術リテラシーは重要ですね。)
    
 (懐かしの京都大学VBL棟がとうとう改修とのこと、かわりに国際科学イノベーション棟という立派なものが建っていました。京都大学のコンテストは、前職で事務局も審査もさせていただいたことがありますが、今年もレベルが高かったです。) 
    
 (本学でパーソナルファイナンス学会を開催させていただきました。お陰様で盛況に終えることができました。これで一段落、安心して12月を過ごすことができます(笑)。)