Strategic dominance is Seven-eleven's specialty, but to put it the other way around,,, - セブンイレブンのお家芸は「ドミナント戦略」ですが、裏を返せば…


バンコク2015年9月、日本ではこういうお店の風景が減りましたね…)

 ノミネートと聞くと、良いイメージを浮かべますが、以下のノミネートは嬉しくありませんね。ノーベル賞候補ではなく、イグノーベル賞候補といったところでしょうか(イグノーベル賞は、ある意味で名誉なのかも知れませんが)。

 この賞にどれほどの知名度と影響力があるのかわかりません。第4回となる「ブラック企業大賞2015」に、「株式会社セブン-イレブン・ジャパン」がノミネートされています。同社の場合、どの立場からみてブラック(*)といわれているのか、判断が難しいところですが、7&iホールディングスが買収等の積極的な経営を続けている近年において、気になる話題です。

 どの立場からというのは、同社の場合、①会社が直接雇用する社員の立場から見た場合、②フランチャイズのオーナーから見た場合、③店舗のアルバイトから見た場合、の3つの見方があると思います。

 ①に関しては、社員の離職率や平均年収、個々の争議などから判断される傾向にあります。同社の場合、同業他社と比較して、どれも高めの数字ですが、成長企業という範囲で見れば、取り立ててブラック企業というほど目立つものでもないと思います。

 ②に関しては、「ブラック企業という言葉と関係があるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。確かにフランチャイズのオーナーは独立しています。しかし日本では同社の契約等の条件の場合、本社側の制約のもと、フランチャイズオーナーは過酷な労働を強いられているという見方がされており、実際にオーナーによる労働組合も結成されています。また「見切り販売」の権利で、本社側とFCオーナー側で対立があったニュースは記憶に新しいですね(同社は公正取引委員会から「独占禁止法−優越的地位の乱用」と指摘されました)。

 ③は同業全体にいえることかもしれませんが、どのコンビニやファーストフ−ド店もアルバイトは低賃金ということから、人手不足に陥りがちです。アルバイトが集まらない結果、フランチャイズの場合は、24時間営業の維持のため、結果的にオーナーに労働の負担がかかるようです。

 このようにみると、今回、「ブラック企業大賞2015」に同社がノミネートされたのは、①〜③のすべてに関係しているかもですが、②のフランチャイズのオーナー側からみた問題が大きいといえそうですね。

 この夏、タイで興味深い話を聞きました。バンコクでは、道を挟んで向かい同士にセブンイレブンが立地している光景を、時折見ることがあります。さすが消費意欲の旺盛な街、儲かっているなぁと思っていたのですが、セブンイレブンフランチャイズを考えたというタイ人の方からの、次のような信じられない話です。

    
 (バンコクの上のセブンイレブンもラプラオ通りを挟んで向かい同士にあります。)

 儲かっているのは確かなようなのですが、フランチャイズをはじめたお店が儲かりだすと、本社側がその店のすぐ近くに、その店より見た目の良い店をもう1つ出店するとのことです。

 日本のセブンイレブンの経営手法は「ドミナント戦略(strategic dominance)」です。特定の地域に集中的に出店をしていきます。この手法がタイに引き継がれているようですが、さすがに日本では向かい同士や、すぐ近く(数件隣のレベル)というのは聞きません。そのように考えれば、日本のセブンイレブンは「まだ」良心的なのかも知れません。

 同社がブラックかどうかは別として、個人的な考えですが、将来的に起業を目指す学生は、巷でブラックとよばれる企業に入社するのは、大きな学びだと思います。そもそもブラックと呼ばれる会社は、その知名度を得るほどに急成長してきました。その成長ノウハウと支えてきた従業員さんたちの頑張りは半端じゃなかったでしょう。近年の日本の経済成長を支えてきたのも事実です。

 もちろんそこから派生する諸問題の存在を否定しませんが、ブラックといわれる会社は、少なくともそのような労働環境であることが広く認知されれば、社会問題的には一定の解決を得たとして良いと思います。あとは求職者に「職業選択の権利」があるわけです。またそのような環境を認識した上で、学び取ってやろうという意気込みで飛び込めば、その人にとって得るものは大きいでしょう。

 正論が(個論では適していても)必ずしも全体最適であるわけではなく、個の権利の主張により、日本の国際競争力が落ちることもあります。日本が高度経済成長を得た裏には、やはり同様の構造がありました。そもそも週休1日、残業しまくりで頑張ってきたのが、少し前の私たち日本人(親世代)ですから、週休2日に加え、各種権利を主張しまくる現在の社会環境の中、高度経済成長で得たもの以上の対価を要求すること自体に、少なからず無理があるのかもしれません。

(*)
 私は服装や小物、備品など、基本的に黒が好きです。身に着けていると落ち着きますし、個人的にはカッコよさも感じます。しかし日本では、「ブラック」とか「黒」は、なぜか悪い事象の形容に使われることが多いようです。一方で「ホワイト」や「白」はその逆のようです。
 ここでは日本で使われていることから「ブラック企業」という表現、または類する言葉を使っていますが、私個人的には、このような使い方は人種差別にもつながるのではないかと危惧しています。そもそも有色人種である私たち日本人が、意図的でないにせよ、白が上、黒が下と思わせるような使い方をしてはいけないでしょう。