Would Thai economy be transformed by institutional change in the tax? - 税制の変更はタイ経済に変化をもたらすでしょうか?


スクムビット通りの某サービスドアパートメント。結構、快適でした。)

 今日は大学で公開講座を行いました。テーマは、地域創生に絡んで、タイから学ぶとして、日本が経済成長と引き換えに失ったものを、タイの事例を挙げて説明しました。地域創生には、アイデンティティの教育が必須というようなことです。タイを話題にするなら、話したいことは、山ほどあるのですが、超早口で90分弱を話し切りました。まだまだ話し足りません(笑)

 マンションの傾斜問題が大きな話題になっています。ヤフーのトップの「『青田売り』がデータ改ざんの遠因」という言葉が少し気に留まりました。また、制度の非難だけの記事かなと思ったのですが、きちんと説明されていました。

 「青田刈り」ならまだしも「青田売り?」というと少し聞きなれない言葉ですが、米の収穫時より前に収穫高を想定して売ることです。いわゆる先物取引契約のようなものですね。米がマンションにかわるだけです。

 確かにこの記事が指摘しているように、青田売りにより「『工期の制限』と『工事費用の不足』は日本のマンション分譲が抱える構造的な問題だ。もっと分かりやすく言えば、『青田売りをするから生じがちな問題』である」というのも、少しは影響したのでしょう。

 「だから『青田売り」が悪い」という論調かと思ったのですが、先物取引がこのスキームは同じことも、きちんと説明されていました。ここで傾斜問題の話からは離れます。さてこの「青田売り」は、確かに景気変動リスクを抑えて、景気が良くなった場合、建物完成時の相場より安く買えるメリットがあります。この記事で、さらにきちんと説明していてよかったなと思ったのが、逆に景気が悪くなれば、解約手付け金の放棄で、契約解除ができるメリットも説明している点です。

 つまり3000万円(解約手付金300万円)で契約した物件が、景気が良くなって相場が3500万円になった場合も3000万円で購入できるし(500万円の利益とみなせます)、景気が悪くなって相場が2500万円になった場合、もちろん3000万円で買うことは出来るのですが(その時点で500万円の損失とみなすことになります)、そういう場合は、手付金の300万円を放棄することで、損失を500万円(あくまで未実現の損失ですが)から300万円に抑えることが出来ます。これはいわゆるデリバティブの一種であるコールオプションの取引ですね。

 こういった身近な話題から説明した記事は、金融リテラシーを育てることにも良い影響がでます。来週の授業の時事話題で触れようと思います。

 しかし惜しかったのが、一点だけ、微妙な間違いがあったことです。「ところが、日本を除く世界の国々では『青田売り』は行われない。建物の外枠ができ、後は内装や設備を入れるだけ、の状態で分譲されるのが主流である。内装や設備は購入者が決まってから工事される。この方式を『青田売り』に対し、『スケルトン売り』と呼ぶ」と書かれた箇所です。おそらく「完成売り」に近いことを「スケルトン売り」というのでしょう。突っ込みどころはそこではなく、青田売りは結構アジアでは行われているような気がする点です。この記事とアジアの実態は違います。少なくともタイでは「青田売り」が行われています。むしろ、売買を見ると、日本よりもっと凄い状況です。

 コンドミニアムの建築計画が出来るや否や、売りに出されていますから…。私のタイ人の知り合いも、完成前に買っているようです。バンコクコンドミニアムなどは、東京と変わらないぐらい高いわけですが、「お金持っているなぁ。凄いなぁ」と言うと、どうも支払うお金も、信用力も持ち合わせているのか怪しいような返答をするので、仕組みを聞いてみると、納得なるほどです。

 タイでは、同じマンションでも何度かに分けて販売されます。ここは日本と同じ「青田売り」ですね。しかし回を重ねるごとに、なんと徐々に値段を上げていくようです。それだけであれば、それでもセカウドハウス(または投資)として、最初の金額で買う契約をしたこと自体の資産の余裕が凄いと思うのですが、実は完成するまでに転売をもくろむ人も多いようです。

 要はディベロッパーが3000万円スタートで、あと5回、100万円ずつの3500万円まで値を上げ売り出すとしても、需要があるので例えば3400万円の売り出しの段階で、3000万円で契約した人が3350万円で転売するというやり方です。確かにこの場合、300万円の手付金で、その手付金を合わせ650万円の回収、つまり手付金以上の350万円の利益になりますね…。最初、このやり方を聞いたとき、「ほほぅ」と感心したものです。

 まぁ、タイの場合、これまでは日本のように固定資産税がかからないですし、相続税もありませんでした。また資産価値が上がる物件もしばしばありました。

 そのようなわけで、ずっと所有していても、外国人に中長期で貸すなどしていれば、心配無用だったのかもしれません。しかし!なんとタイでも軍事政権になってから、相続税が導入されました。また2017年を目途に、固定資産税に相当する土地家屋税が課される予定になったとのことです。軍もお金集めが大変なようです。さて、タイのコンドミニアムの相場は、今後、どうなるでしょうね?

 ともあれこのような話を、金融の専門職でない人と普通に出来るので、タイ人は一般の人でも金融リテラシーが高いなぁという感覚を持ちますね。

 今日は、月末です。明日から11月ですね。

    
 (私はタイでは、サービスドアパートメント等に滞在することが多いです。)
    
 (もうすぐ11月です。紅葉の季節ですね。)