Probably, it is a wise decision as top management. - スカイマーク社とエアバス社のもめごとについて

 今日は国内線3位のスカイマーク社の話題がちょっと気になります。日本のサイトを見ていると、現在のところスカイマーク社の一方的な見解が述べられています。それだけ見ると、エアバス社ってどんな会社だろうと思うのですが、THE WALL STREET JOURNAL には、エアバス社の意見も出ています。

THE WALL STREET JOURNAL(リンク)より引用〜

 Skymark, a budget carrier that tumbled to a loss in its latest financial year, said it wanted to cancel the order due to its struggles with tougher competition and a weaker yen. It said Airbus had demanded as a condition for canceling the order that it join a bigger airline group.

 "We cannot accept a demand that would shake management independence," Skymark said in a statement, adding that the company has been able to offer lower prices precisely because it is independent.

 Skymark also accused Airbus of demanding "exorbitant" cancellation fees.
 Airbus spokesman Stefan Schaffrath denied that Airbus has made any demands about Skymark's future business structure. Airbus said it "is reserving all its rights and remedies," without elaborating.

〜引用ここまで〜

 前半のスカイマーク社の言い分は日本の報道通り、エアバス社から「大手の傘下に入りなされ」と要求されたとしていますが、最後の2文を見ると、エアバス社の広報ステファンさんは「スカイマーク社には、企業体に関するどのような要求もしてへんわ!」と言ってます。

 記事に書かれている通り、スカイマーク社が大手の傘下に入ることで「同社の支払いに対する不安が払しょくされる」とエアバス社が考えるのは当然のことですから、もしそのようなことを言っていたなら認めてもいいような気がします。

 しかし前期に久々に最終赤字に陥ったスカイマーク社ですが、それでも現状は無借金経営の財務が綺麗な会社です。よほど経営環境が悪化しない限り、当面は資金調達に苦労しないでしょう。法外(exorbitant)と言及されている違約金ですが、あくまでもエアバス社の提示金額であって、裁判になったとすれば適切な金額に落ち着きます。また今回、違約金を支払ってでもスカイマーク社が拡大経営のリスクを回避したことは賢明だと思います。

 一方でエアバス社は、どうにかしてAirbus A380スカイマーク社に買わせようとしてきた交渉の経緯がよくわかります。

 "Airbus is looking for another customer for the two aircraft, Mr. Schaffrath said. Finding a buyer could be a challenge."(同記事)とあるように、確かにエアバス社としては、他の顧客が見つかればいいでしょうが厳しいようですね。

 しかしエアバス社の明らかに無茶な要求はパフォーマンスではないかとも疑ってしまいます。例えばですよ。本当に例えばの話ですが、外国の航空会社にしてみれば、東京五輪も控えた日本への国際線は魅力です。しかし日本に飛ばすと、東京の先の接続もないと国際線としての魅力も薄れてしまう。ぜひ国内線の接続が欲しい。

 あれ?そう考えると、国内線第3位という接続網をもっており、成田-ニューヨークを飛ばそうとしていたスカイマーク社は、何かとても魅力に見えてきました。特にアメリカの某航空会社D社には…。エアバス社に「ちょっとさ、エアバスさん。あのスカイマーク社、欲しいねん。そやから、大手の傘下に入るように脅してぇな。」なんてことは?JALワンワールドANAスターアライアンス、とうことはスカイチームの米国のD社が筆頭候補になります。D社の思惑と考えれば、綺麗にパズルの欠片がはまってしまいます。

 そういえばJALが経営危機に陥った時、別の米国のA社も再建に手を挙げたことがありました。どうやら米国の航空会社にとって、日本市場(アジア市場)は魅力的にうつるようです。何より太平洋側から見れば日本はアジアの玄関口、アライアンスで繋いで国際ハブ空港にもなりますからね。

 そういえばあの時もD社は名乗りを挙げていましたね。→2011年11月のブログ(リンク)

 D社はエアバス社から結構入れているようですし。

 スカイマーク社が独立路線を貫くのかどうかも含め、今後の動きに注目したいと思います。

(7/31追記)
 昨日7/30にエアバス社は交渉打ち切りを「わざわざ」公表しました。その動きを読むと、どうやら今回はエアバス社の思惑のみで動いているよう見えてきました。
 これも推測ですが、エアバス社がスカイマーク社に大手の傘下に入るよう要求した意図は、外資規制が絡むスカイチーム傘下ではなく、場合によっては子会社化できるJALANAの傘下に入れということかもしれません。
 日本市場はボーイング社が占めていますので、エアバススカイマーク社に採用させ、そのスカイマーク社が日本の大手の傘下になれば、日本の大手市場に食い込むことができる。つまり日本市場におけるプレゼンスを高める…、どうもそのような商売っ気むんむんのパフォーマンスを、エアバス社はスカイマーク社とメディアを上手く使って行おうとしているように見えてきましたね。
(8/1追記)
 昨日7/31夕方に、同社の四半期決算開示がありましたが、その数字を見る限り、A380の導入を見送ったことはやはり賢明な判断でした。同社がまずやるべきことは、成田線を中心とする不採算路線の廃止、縮小均衡であることは間違いなさそうです。今後、銀行借り入れを考えるにしても、中期の会社計画として要求されます。採算性のある東京-福岡を機材変更で増強しているのは、選択と集中の意味で評価できます。
 別の道としては、やはり大手の資本を受け入れることだと思われます。その場合、同社社長の独立を貫くという方針転換が必要です。かつて消費者金融業界では、同業他社が銀行系になる中、武富士が独立を貫くと言い張って、結局最後は方針転換して希望してもパートナーがいなくなっていたという出来事がありました。スカイマーク社にはそのような事例も踏まえた迅速な決断が要求されると思います。