Creative Deconstruction ! − それはイノベーションとはいえないぐらいの、ほんの小さな工夫かも知れませんが


(京都駅八条口の通路にあるカフェのディスプレイ)

 J.A.Schumpeterは、「企業家のイノベーションによって,古い経済・経営体制は破壊され新たな経済発展が生じる」(大辞林「創造的破壊」の説明より)という考え方から、資本主義は発展的かつ動態的であると述べました。もちろんイノベーションという言葉には様々な意味があり、Schumpeterの述べる創造的破壊(Creative Deconstruction)はインターネットの誕生によりFAXが衰退したこと、携帯電話の普及がポケベルを時代遅れさせたことなどのレベルをいうのでしょう(おそらく…。Schumpeterの頃はまだインターネットも携帯電話もありませんが)。しかしほんの身近なところでは、先日来から触れている商業集積も当てはまると思います。

 たとえばユニット単位で見てみましょう。個人商店からフランチャイズ方式のコンビニへのアップグレードで消費者の利便性が高まりました。そこにはITによる在庫管理システムなどの新たな武器(これこそ創造的な破壊兵器)が存在するわけです。喫茶店の場合、シアトル系と呼ばれるカフェに徐々に置き換わったとみることができます。そこには新たなビジネスモデルの導入があるわけです。つまり旧ユニットは新ユニットにとってかわられているのが現代資本主義社会ですから、Schumpeterの言葉は「まさに」今も本質をついています。

 創造的破壊は「企業家のイノベーションによって起こるわけですから、その動機となる競合状態が必要であることは言うまでもありません。ミクロ経済学では独占状態について、独占企業の利潤の最大化という行動により、社会的余剰の縮小という説明で、独占状態の問題を指摘します。もちろんそれは正しいわけですが、やはりその根本には競合がないことが挙げられます。

 さてタイには、多くの種類の大型ショッピングセンター(大型商業施設)が存在します。マックスバリューにテスコロータスのようなやや大きめのスーパー(一部はコンビニ形態ですが、コミュニティ・ショッピングセンターレベル)、フォーチュンタウン、ビッグC、エスプラネード、RCAプラザ、セントラルワールド、ITモール、パンティッププラザ(リージョナル・ショッピングセンターといわれるレベル)などです(さらに中級〜高級デパートの部類を挙げればきりがありません)。その中でも上記のような現象に近いのではないかと思う事例が存在します。

 それはアソーク通り(縦)とラマ9世通り(横)の交差点の北で、アソーク通りを挟んで対峙するフォーチュンタウンとセントラルワールドです。以下、先週(May 25, 2013)の訪タイ時の写真を載せます。

    
 (エアポートリンクのマッカサン駅あたり(左の写真はそのあたりの高架下)から、アソーク通りを北に向かうとフォーチュンタウンが見えてきます(右の写真の向こうの建物、メルキュールホテルの向こう隣り))

    
 (フォーチュンタウンのほうがこの地に先に構えていました)

    
 (そして最近、セントラルワールドがここにもやってきました)

 私の感じるイメージとしては、フォーチュンタウンはかなり庶民的なお店の集合、セントラルワールドはデパートの一歩手前のような少し洗練されたショッピングモールです。このセントラルワールドができてからというもの、フォーチュンタウンの人気がグッと落ちた気がします。しかし最近はフォーチュンタウンも頑張りだしたようです。

 競合は必要です。そしてそこに大きなイノベーションはなくとも、少しの工夫が、結果として消費者に対し、より良いサービスを提供するようになります。

 しかし、その中でも昔ながらの雑然としたマーケットが残るタイ王国、私は大好きです。

 
 (タイのサイアム駅南にあるフリマ?)

    
 (こちらは再び京都駅、このお店、これらのディスプレイは人の目を惹きますね)
 
 (どのケーキを食べようか、ってメニューではありません^^;)