It is both market-focused and market-driven. (Peter F. Drucker) − 市場と顧客からビジネスをスタートさせること

 "Creative imitation starts out with markets rather than with products, and with custmers rather than with producers. It is both market-focused and market-driven." (Peter F. Drucker “Innovation and Entrepreneurship” Harper Business, 1986, (Reprint 2006) pp.224)

 来月のある学会報告に向けて、ドラッカーの名著のひとつ(と私が思っている)“Innovation and Entrepreneurship”を読み直していました(今月来月と学会やシンポジウム報告が続くのです…)。学会報告とは関係のない部分ですが、セオドア・レヴィット教授が提言した言葉"Creative imitation"(創造的な模倣)について触れられている章があります。改めて読むと「失敗から学ぶのではなく、先駆者の成功をさらに創造的に利用すること」、また「外部環境の変化を捉えることが大事」と書かれています。

 重要な部分が冒頭の引用です。言葉だけにとどまらない何か強い核心を感じる言葉が「市場と顧客からビジネスをスタートさせる」という部分です。言い換えれば「市場志向」、「顧客本位」ですが、前の文とともに強調されると重さを感じます。

 この部分が気になったのは、昨日の出来事からです。私の住居のそこそこ近くには、当地、福井では珍しく、「特別に感動するほど味が良いわけでもなく(普通に美味しいです、念のため^^)、ランチの価格が1000円を超えるにもかかわらず、また決して量が多いとかということもないのに、1時間待ちをしなければならないお店」があります。味は美味しかったのですが、ぶっちゃけて言ってしまえば「作って取り置いてあるお惣菜を盛り付けるだけ」(言い方が悪くごめんなさい…)です。「価格や味だけ」を見れば、それに比して並ぶほどのものじゃないとも思います。しかし行ってみると、「これは『待った甲斐』があった」という内容でした(ちなみに1軒目に訪れたフレンチのお店は満員で入れず待ちも無理な状態だったため、2番目の候補のお店でした。結果的にこっちで正解でした^^)。

 そのお店は「Natural deri café Veg・Yard(ベジヤード)」といい、オーガニック野菜のお店です。

 
 (メニューがまたかわいいです)

 頂いたのは下記のランチです。

 
 (「Vegたのしみ9種のデリプレート」といい1300円でした)

 メニュー名からもわかりやすいのですが、野菜のランチです。じゃがいもとたまねぎ中心です(そう言ってしまうと知る人ぞ知る同志社大学前の『いもねぎ』を思い出しますが…)。

 注文時には苦手なものを聞いてくれます。注文するとあっという間に出てきます(まぁ、そこは盛り付けるだけですから…)。出てきてからの徹底ぶりが少々感動したのですが、セットのドリンクとしてアイスコーヒーを選ぶと、有機栽培と書かれたシロップが出てきました。私はコーヒー好きですが、ブラックではあまり飲まないほうなのでミルクが欲しいと告げると、「ミルクには不純物が入っている可能性があるので出していない」とのこと。ほほぅ、納得です。

 帰りは雨が降ってきました。車までの十数メートルの距離を歩こうとすると、店員さんが出てきて、傘を持って出てきてくれます。そのほかのサービスの徹底ぶりも予想以上でした。

 基本においては決して従来のカフェと何ら変わりがなく、だからといって価格競争を仕掛けるわけでもない、付加価値を提供して成功を収めているのですが、その付加価値はサービスに対する『顧客本位』だけでなく、オーガニック野菜ブーム(?)という的確に捉えた「市場志向」、まさに従来のカフェに対する"Creative imitation"(創造的な模倣)でした。

 そういえばドラッカーは次のようにも述べています。" It is 'creative' because the entrepreneur applying the strategy of 'creative imitation' understands what the innovation represents better than the people who made it and who innovated." (同書p.220)「(創造的な模倣をする人は)最初に発明しイノべーションを行った人より、そのイノベーションをよく理解しているから、(それにも増して)『創造的』である」と。

 2008年にオープンしたこのお店ですが、「市場志向」のお店のコンセプト、「顧客本位」のサービス、その双方の徹底ぶりです。参入障壁が低いといわれる飲食業においても、ドラッカーの言葉は生きていると感じました。

 昨日のランチのおかげで私も微妙に健康になった気がします。しかし1時間の待ち時間の間、近くのジェラートのお店でトリプルを食べていたので…、意味ないか?(笑)

 
 (「さんしゅうえん」でボリュ−ムたっぷり!ショコラティラミスイチゴのトリプルジェラート!!)

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 ドラッカーというと映画になったりと身近になりましたが、マネジメント関連以外にも面白いものがあります。特にこの“Innovation and Entrepreneurship”は具体例が多く示されており、英語も平易で読みやすいものです。