タイにおけるインフラ的産業の育成支援の必要性

 私は自身の研究テーマにおいて、「起業教育・金融経済教育に関する研究(ゲームの利用を含む)」の他にも、「日本資本企業のタイにおける経営戦略(主にファイナンスに関して)」などを扱っています。2〜3年前に書いた論文にて、在タイ日系中小企業のファイナンス手法の現状と、政府によるファイナンス支援スキームの提言を行っていました。このたび私がタイについてすぐに、その論文を読んで頂いた、ある在タイ企業の方から、偶然にもメールが届きました。

 「いまちょうど本学の院生や研究員の引率でバンコクにいます」と返事をすると、相談事があるとのこと、「すぐに会おう」となりました。

 その企業の社長は、タイで起業をし、会社の規模もそれなりに大きくなっています。今回の相談は、自身の会社のことではなく、在タイ中小企業全体をファイナンス面から支援できるようなもの作りたいとのこと、そのスキームについての相談でした。

 その規模、支援対象などは想定されていたのですが、まだそのほかの部分についてはかなりの詰めが必要です。もし政府による支援的なものにする場合なら、その理由づけも必要です。その点について、現状における在タイ日系中小企業の現地におけるファイナンスの困難さ、在タイ中小企業が果たす役割、日本への貢献について、インタビューの中で整理を行っていきました。いま提言をまとめています。

 なぜ在タイ中小企業を支援する必要があるのか、支援することにより日本(国、政府)にとってどのようなメリットがあるのか、この点は非常に重要で、明確な回答が必要です。

 産業の空洞化が進む(様々な面でコスト高が進む)日本において、タイが近隣の東南アジア諸国を含んで、生産拠点としても消費(販売)市場としても、その拠点として、従来以上に重要性が増しています。この点から考えるべき答のひとつは、日本の大企業から中小企業に至るまで、それらの企業が東南アジアに進出する際のインフラ的な役割を中小企業が担っているということです。インフラ的というのは、サプライヤー、商社という従来の概念をさらに広げた、他の日系企業が東南アジア進出の際に必要とする(生活支援を含めた)すべてのインフラという意味です。

 タイへの企業進出の形態は、大企業の移転に伴った系列中小企業の追随進出という10年以上前のものとは大きく変化しています。中小企業単体でもタイへの移転を考える昨今において、従来型とは異なり、広く他の日系企業の進出を支援する役割が、在タイの中小企業にはあります。

 このようなタイの日本資本の企業をとりまく環境変化を分析すると、自ずと政策支援のあり方にも柔軟な変化が求められることがわかります。

 
 (タマサート大学東アジア研究所内の茶室にて撮影)

 9日は日本のODAで建設されたタマ大内の茶室にて、バンコクに駐在する京都大学大阪大学明治大学東海大学など、またタマサート大学、バンコク大学の先生方とお茶をしました。この茶室の建設一つをとっても、例えばバンコクに畳屋が一軒もなければ、大きな困難を伴うわけです(ちなみに以前は2軒あったが1軒になってしまったようです)。上記の内容とは少し異なりますが、インフラ的な役割の中にはこのようなイメージも当てはまると思います。