独立志向は就職活動に有利か、不利か?

 「大企業病」という言葉があります。主に「組織が大きくなりすぎることによる弊害」に関してこの言葉がよく使われます。その中に「保守的になって挑戦しないこと」「チャレンジ精神が欠如した組織」などの意味合いも含むことがあります。

 「大企業病」といわれるものにかかっている、日本の大企業の一部(多く?)においては、「起業家精神」「独立志向の考え方」を持つ人物こそ、その企業において必要とされる人材なのかもしれません。

 本日、ある学部学生から下記のような質問を受けました。キャリアや起業、ビジネス関係の授業を担当しているので、「起業をしたい」という相談は過去にも様々な大学で受けてきたのですが、下記の質問は確かに就職活動をしているときに悩むものかな、と思います。
「将来、会社を立ち上げたいと思うのですが、企業に就職するといつかは辞めねばなりません。企業側から見て独立したいと思う人は、どういうふうに考えているのでしょうか?」

 一義的な答がないのは確かなので、そのように答えるのがまず前提だと思っています。日本における一般的な考え方は、「辞めるとわかっている人を採用しようと思わないのではないか?」かもしれません。

 しかしふと思い返すと、私がかつて会社経営をしていたときは、独立志向の意見を持つ人と積極的に面接し、実際にそのような数名の人物を採用した経緯があります。「独立するぐらいのその仕事への想いがないと、いくら事務能力が高くとも、将来一つの部門を任せられない」という、採用する側の理由からです。また長期的にも「関係会社を任せることができればいい」「辞めた後も、同業種であれば互いに良い連携が取れればいい」という理想を持っていました(私の場合、過去にお世話になった職場には恩返しというと烏滸がましいですが、少なからず陰ながら協力していました。しかし実際に採用する立場になったときは、上手くいかないものです…)。

 なお採用時は自分の後と任せるという考えは全くなかったのですが、その数年後、そのような人物の1人に関連会社1社の社長を任せたことなどを経て、(私の個人的な事情により)私が会社経営から完全に退くとなった時、会社の後を託したという経緯があります。残念ながらその後は順調にいかなかったようですが、やはり私が引退時にその人物に託そうと判断した理由は、1999年の採用面接時に「自分は将来、独立したい」と彼が述べた言葉が記憶に残っていたからです。

 このような経緯を思い返すと、「辞めるとわかっている人を採用しようと思わないのではないか?」という考えは、決して正しいとは思いません。独立志向の人物を採用するという例は、社員独立制度、のれん分け等の方法で、独立開業させることを前提として社員採用を行う会社「以外」にも、「意外と」多く当てはまると思います。

 冒頭に述べたとおり、一義的な答はないので、自分なりに相手企業が何を求めているのかを、面接における相手社員との会話等を通じ、試行錯誤しながら見抜くことが必要でしょう。先輩社員から、その会社が常々どのような人材をもとめているかを聞き出すことも効果的かもしれません。

 本人に返答する前に、もう少しまわりの経営者の方々にも、ヒアリングを重ねてみようと思います。