Definition of minus - そのマイナスの意味は確かにセルシウス度の話とは違いますが…

 先月末に、日銀の追加金融緩和策でマイナス金利が発表されました。未だに賛否が話題になっているようです。影響についても様々に憶測は述べられています。すべての政策にとって直接的な影響は明白なものの(ここは明白でなければ政策と言わないですね)、間接的な波及効果は予想がつきにくく、想定外はつきものです。

 ただ期待に似た憶測が広まるのは怖いですね。「マイナス金利が原因でアベノミクスが崩壊した」「マイナス金利というアベノミクスの政策が株価を下落させた」という某メディアの報道には、怖いというよりもう呆れます。マイナス金利の導入で日本の株式市場だけが下げたのではなく、米国金利上昇、原油安、中国経済などを原因とする世界同時株安が起こっています。同時にそれらの要因から、相対的に比較的「安全」とされる日本に対する資金の移動、つまり円買いによる円高が加わり、日本の競争力低下の懸念から日本の株価下落が起こっています(なお円高を悪者のように言いますが、円高に振れたことは相対的な日本の評価の証です)。マイナス金利導入とどう結び付けて、アベノミクスの失敗や株価下落といえるのか神経を疑います。

 ともあれ話を戻します。マイナス金利の導入により「他の金利も下がるのでは?」と考えるのはまだ現実的な線です。しかし果てには「個人が銀行からお金を借りれば、逆に利子がもらえるのでは?」という戯言もあるようです。それは政策側と銀行が相当に追い込まれた場合の可能性として0とはいわないですが…、今のところはまずないでしょう(笑)。

 マイナス金利そのものは決して難しくなく、報道の通り、銀行が日銀に預けるお金の一部の金利がマイナスになるということだけです。つまり銀行はこれまで日銀からもらうことのできた金利分および支払う金利分だけ収益が下がります。普通に考えれば、個人が銀行からお金を借りると、利子がもらえるなんていうことになれば、銀行は余計に収益が悪化します。よってその可能性は低いわけです。むしろ日銀から取れなくなった利子を取り戻そうとするでしょう。
 ①個人から取り戻そうと考え、むしろ貸出金利を上げようとするかもしれません。
 ②銀行から出ていく個人への預金利子分を抑えるため、個人から預かったお金の預金金利を下げるかも知れません。(ここは想定通りですね)
 ③やはり個人から取り戻そうと、銀行のその他のサービス、代表的なのがATM手数料ですが、その価格を上げるかもしれません。
 このように考えると、マイナス金利はいいのか悪いのかと、その影響を疑問視しますね。ただもちろん国の思惑のとおり、銀行としては日銀にマイナス金利分を払うのを避けるため、優良な貸出先やこれまで「微妙〜」と思っていた貸出先には、積極的にお金を貸そうとするインセンティブは働くでしょう。しかし「微妙〜」を超えるとありえないわけで、つまり貸し出しにも限度があって、貸し倒れになるところにお金を貸して大損は出したくありません。それならまだ日銀にマイナス金利分を払っていた方がいいわけです。要は比較の問題ですね。

 比較の問題でいえば、こうも考えられますね。「微妙〜」な企業にもすべて貸し、どうにもこうにも貸出先がなくなった場合です。もちろん、その時には考えられる運用先のリスクも「微妙〜」なところまで、全て買い漁ってということになります。

 つまり「微妙〜」なところに手当たり次第当たって、日銀に0.1%の金利を払ってでも預けなければいけなくなった場合、その時には個人の住宅ローンなど、回収の可能性が高いところには0.1%未満の金利を「つけて」貸してくれるかもしれません。比較の問題ですから、日銀に払うか個人の貸付先に払うかの問題なわけです。

 ですので、賛否どうこうというより、銀行員が融資先を見る目があり、国民が正しい金融リテラシーを備えている限りにおいては、そうそう経済が混乱することはないわけです。この前提が問題ではありますが…。

 ついでに触れると、もしかすると私たちの生活レベルでは、実は既にマイナス金利になっているかもしれませんよ。経済学の初歩を少しかじっていれば気づくことですが、名目金利はマイナスではないにせよ、物価上昇率(下落率)を加味した実質金利でということです。デフレが進行していたとすれば、日常生活レベルで実質金利ではマイナス金利という場面が、これまでにあったのかもしれません。逆に名目金利以上に物価上昇率が高ければ、銀行にお金を預けていても相対的に資産減少していますから、この場合もマイナスですよね。

 マイナス金利と騒ぎますが、要はこれだけのことです。何かの基準にこだわるのではなく、常に基準に対しても客観性ももって捉えるよう心掛けていれば、世の中には、「何を騒いでいるのだろう?」と思うことが多いものです。

 確かに、当地の気温が3℃からマイナス1℃になるという話(これは水の融点を0℃にした融点と沸点との間を100等分した間隔の増減のセルシウス度の話)と、受け取る・渡すという正反対の意味をもつプラス0.1%とマイナス0.1%という話(こちらは0を基準に反対の意味をもつという話)では、議論するレベルは違いますけどね。

 今日、ようやく一瞬ですが仕事が一段落しました。まだ溜まっているものは多いのですが…。もう2月の中旬ですね。もうすぐタイです(^−^)ノ

    
 (今年のしろたんカレンダーは旅行シリーズのようです。1月は日本からスタート。)
    
 (2月はベルギーのようです。)