We are talking at cross purposes. - 議論がかみ合っていないと思うのですが…

 6月後半は、多忙という言葉で表現できない程、仕事に追われていたのですが、ようやく一段落しつつあります。主張したいことはいっぱいあったのですが、この6月後半で大きな話題といえば、一部メディアと反対派の人々による「日本版」集団的自衛権の誤解かと思います。

 反対派の人々は、本当に7月1日に閣議決定された内容を理解して反対しているのでしょうか?6月3日のブログで「本質的な見方をすると、いま話題の集団的自衛権の賛否も、もう少しましなレベルで議論できるでしょう。」と書きましたが、まさに日本において、一部のメディアの誤解に基づく報道がされていて、さすがに忙しい中、いちいち指摘するのも馬鹿らしくて、ブログで触れる気になりませんでした。しかし閣議決定後もまだ尾を引いているので、わかっている人にとっては当たり前のことですが、触れておきます。

 国際連合のホームページから、Charter of the United Nations の Chapter Ⅶ を見てみましょう。

Article 51
 Nothing in the present Charter shall impair the inherent right of individual or collective self-defence if an armed attack occurs against a Member of the United Nations, until the Security Council has taken measures necessary to maintain international peace and security. Measures taken by Members in the exercise of this right of self-defence shall be immediately reported to the Security Council and shall not in any way affect the authority and responsibility of the Security Council under the present Charter to take at any time such action as it deems necessary in order to maintain or restore international peace and security.(引用:国連ホームページ

 要は1文目なのですが、これは完全に武力による攻撃を想定しています。「国連メンバー(国)に対して軍事攻撃が起これば、安全保障理事会が国際的な平和と安全を維持する行動をとるまで、個別または集団の自衛権を害さない。」としています。ここを見れば確かに「一般にいう」集団的自衛権に反対をする人の主張について、言いたいことは理解できます。

 しかし日本の与党協議ではこのレベルにおける容認は一切していませんよね。残念ながらテレビでよく見る池上さんの解説も、どうも日本の与党協議における内容を踏まえているとは思えません。繰り返しますが日本が行うとしている後方支援活動は上記51条でいう集団的自衛権の話ではありません

 おそらくですが、多くの一般市民の反対派は国連憲章51条のことだと勘違いさせられ反対し(つまり意図的に勘違いの方向へと誘導しようとしている集団がいるかもということです)、賛成派は日本の後方支援活動を中心とした実際の日本における解釈変更に賛成しているわけですから、これではいつまでたっても無駄な議論が続きます。

 ぜひ閣議決定の全文を読み込んでください。日本の閣議決定の内容は国連憲章の範囲とは比較にならないぐらい、相当絞りこまれています。(リンク→国家安全保障会議閣議決定(平成26年7月1日)

 感情論は結構な割合で判断力を鈍らせるようです。

 面白い記述があります。決して先人を非難するわけではありませんが、自戒も込めて引用します。

 「(東條英機元首相が、東京裁判で九カ国条約違反について追及された際に、よくわかっていなかったと述べたうえで)日本人というのは自分が結んだはずの国際条約でさえよく読まないんですね。よく読まないままサインしてあとで突っ込まれることになる。日本人に外交センスがないなんて話は、もうこの『条約を読み込む』という時点から落第点なんです。」(半藤一利戸高一成「日本人と愛国心−昭和史が語るもの」PHP文庫、2014年,P198)

 メディアの扇動を鵜呑みにして、熱くなるのはできる限り避けましょう。Calm Down!

(注)
 決して「一般の」反対派の人々を非難しているわけではありません。私の知り合いも誤解している人が結構多いです。メディアによる誤報により議論がかみ合っていない気持ち悪さは明確にしたいと思います。

(これ大事!)
 さも私たちの国が国連憲章でいう集団的自衛権を行使するみたいな話にすり替え、反対世論を作り出し、実際に議論している後方支援協力すらさせなくして、日本を世界から孤立させようなんていう意図(もしかしてアメリカから引き離そうとする意図?)を感じないわけではありません。恣意的な扇動については他のメディアも指摘している通りだと思います。