エリアフランチャイザーが離反?−可能性は否定できませんが言い過ぎかと・・・

 「韓国ファミリーマート離反?」
 このように本日7/4付のYahoo!のトップ見出しに報じられました。同件は既に先月6/18付で報道(時事通信など)されています。ファミリーマートの持ち分適用会社(議決権所有比率が20%以上50%以下の関連会社)である「普光ファミリーマート」(普光グループ(韓国財閥系))が社名を「BGFリテール」に変え、さらに屋号(ブランド)も「ファミリーマート」から"CU"に変更するというものです。ただしファミリーマートとの提携関係は今後も維持するとのことです。

 ちなみに同社に対するファミリーマートの持ち分比率を調べてみると現状では23.48%でした。また"CU"とは"CVS(Convenience Store) for You"の略で、"See you"とかけているとのことです。

 さて、この件をもって「離反」という言葉で例えると、あえて対韓感情を悪くするような意味合いになるのではないでしょうか。確かに同社は1990年10月ソウルに1号店を構えて以来、現在では店舗数が7000を超え、店舗数、売上ともに韓国では断トツの1位になっています。それだけに会社名、屋号ともに「ファミリーマート」から変更するというのは同社にとっても思い切った決断であり(当然、同社にもリスクが存在します)、ファミリーマートにとっては海外展開する12000弱の店舗のうちの半数以上が同社エリアということですから、非常にインパクトが大きいものです。しかしこの時点においては同社が何か契約違反を犯しているわけではありません(エリアフランチャイズの契約内容に、「同社が一方的に名称変更を行う場合に、同事業自体の継続を阻止する条項」が入っていれば別です)。

 ただし、韓国人記者がレポートしている同社の発言、「まず新しいブランドの定着に全力を傾け、海外進出も地道に行っていく」引用サイト)という文言は見過ごせません。契約違反となる可能性が極めて高くなります。エリアフランチャイザー特定地域のみにおいてのみ加盟店を募集する権利をもっています。つまりファミリーマート「韓国における」エリアフランチャイズ契約を結んでいる同社の場合は、(屋号等を変更しても、ファミリーマートとの提携を続ける限りにおいて)韓国以外の地域に進出するとなると、当然問題が発生します(既にエリアフランチャイズと類似の契約内容を除いて、戦略的提携を維持するとなっていれば、我らが日本のファミリーマートは、まさにノウハウのバクられ損、かなりしてやられていますが…)。今後の動きに注視する必要があります。

 いずれにせよ同社に対し、現状、ファミリーマートは23.48%の出資をしているわけですから、同社の成長はファミリーマートにとっても利益が生まれます。今後、この出資比率を維持できるのか、もしくは妥当な価格での出資比率引き上げができるのかにかかってくるでしょう。

 当然、ファミリーマート側としてはこのような交渉の際に、韓国国内の別の会社とエリアフランチャーイザー契約を結ぶ可能性を含め、今後、どういった決断が自社にとって利益があるかを見極めながらの駆け引きが必要になります。報道を見る限りでは、同社とファミリーマートの戦略的提携は続くようですから、決して否定的なニュアンスで見出しにするのはよくないと思います。

 ビジネス的な冷めた見方をすると、対日感情が全体的に決して良いとは言えない特定アジア国において、日本ブランドを消して商売をするというのが、同社ならびにファミリーマートにとっても、むしろ賢明との判断かもしれません。フランチャイズ形態は、消費者だけでなく、フランチャイズオーナー(加盟店主)の感情も無視できないからです。

 最後に個人的な感情を絡めて一言付け加えると、韓国人に日本人の常識で話をするのは禁物です。我々日本人の場合は主従関係の絆を大事にしますが、つまり成長を指導してくれた親方を決して裏切らないという感情や文化をもつと思いますが、韓国人はそうではないかもしれないからです(実際はどうか知り得ませんが)。国際的なビジネスを展開する企業では、チャイナリスクといわれる対中ビジネスの失敗事例なども検証し、参考にするでしょうから、ファミリーマートも国際ビジネスではきっと様々な可能性を織り込み済みだと思います(そう願っています)。

 また国内外に関係なく、お店や事業が成長すると指導を受けた企業や人は「自分だけでもできるんじゃないか?」などと妄想し、独立という言葉がふと頭をよぎります(先に述べた理由で、日本人であれば、親方や前所属組織に対し恩を仇で返すような人は少ないでしょうから、独立するにせよ、顧客対象や展開地域を変更するなどの配慮をするものです)。それらの事情を考慮の上、独立した人が初めて気づくこと、それはいかに自分たちが今までバックにあった会社名や屋号名のブランドに支えられてビジネスをしてきたかということです。独立・起業というのは、決して簡単なものではありません。