沖縄はアジア金融の拠点になりうるか−東京AIMと沖縄県の金融特区の今後に注目!

 (首都圏を除き)出張の際は、少し意識的に地域の新聞を見るようにしています。その理由は、普段住んでいる地域では手に入らない、その地の詳しい情報を知ることができることによります。今回の沖縄への研修引率業務はあくまで教育活動で、個人の研究とは別物と割り切っていたのですが、ところがどっこい、なんとなんと、ストライクなテーマに遭遇しました!!机に向かって文献を読むだけではなく、自ら現地に足を運ぶこと、フィールド研究の大切さを改めて感じます。

 さきほど琉球新報を見ていると、今日午前に訪問した沖縄県産業振興公社に関して、気になる記事がでていました。同公社が東京AIMへの上場審査を行う法人(指定アドバイザー)「沖縄型J-NOMAD」を来月中にも設立するというものです。ベンチャービジネスの直接金融はかつて博士論文を書いた内容にも関係する、私が専門とする分野です。(今後、沖縄に注目すると)面白いことになりそうな予感がします。

 AIM(Alternative Investment Market)はその略語をエイムと読み、一般的な上場市場とは異なるプロの投資家向けの市場を指します。スタートは1995年にロンドン証券取引所が設立したロンドンAIMになります。最も特徴的な点はNomad(Nominated Adviser:日本語では「指定アドバイザー」と訳されています)といわれる制度です。企業が上場するのにふさわしいかどうかを判断したり、上場後もアドバイスを行う役割を担います。

 東京AIMに関しては、このNomad(特に「J-NOMAD」と言われていますが)に現在、野村、大和、日興の大手3社やその他銀行系証券等をあわせ7社が指定されています。つまり今日の記事によると、沖縄県産業振興公社はまさにこの8つ目の「J-Nomad」を設立しようとしていることになります。

 今日、午後に議員の方とお話をする中で、沖縄県は従来の観光産業に加えて、金融とITに力を入れる特区に関連した話も聞きました。その金融特区に関係します。

 日本における従来の(質的にも規模的にも)上場未満とされるベンチャー企業向け市場、例えばグリーンシート等と何が違うのかですが、まず大手証券が参加している点、そして一般投資家ではなくプロの投資家のみが参加する市場という点、これらは明らかです。しかし実質的な部分における大きな違いは、上場時ファイナンスに限らず、上場後のファイナンスも継続的に行える点でしょう。

 手前味噌ですが、私は院生時代にまとめた博士論文にてグリーンシートを取り上げました。そしてベンチャービジネスの成長において、その成長に応じた段階的な資金調達モデルの必要性を強調していました。今、まさに日本において、この形がAIMという形で実現しようとしています。

 ちなみに東京AIMはロンドンAIMをその基本としており、東京証券取引所とロンドン証券取引所の共同出資で設立されます(51:49の出資割合)。上場市場とは異なり、ベンチャービジネスにとっては、監査証明が1期分であることや、J-SOX法で定める各種報告書の作成に係る費用が大幅に削減できることなどの費用的メリット、また同じく監査証明が1期であることとNomad制度による資金調達のスピーディさ、ロンドンAIMの実績とブランドなどが魅力です。海外の企業や投資家も参加する国際性も売りとみる向きがあるようですが、そこはまだ未知数です。また株式市場としての「東京AIM」に加え、その債券版となる「東京BOND Market」の設立構想もあるようですが、この動きにも引き続き注目です。