学生の視点−大学に求められるサービスとは?

 2003年7月に国会にて国立大学法人法が成立し、2004年4月より国立大学法人が設立されています。何が変わるか、といいますか、その狙いや目的というものは、

 1.「大学ごとに法人化」し、自律的な運営を確保
 2.「民間的発想」のマネジメント手法を導入
 3.「学外者の参画」による運営システムを制度化
 4.「非公務員型」による弾力的な人事システムへの移行
 5.「第三者評価」の導入による事後チェック方式に移行

といわれています。

 簡単にまとめると、大学個々に権限が委譲されるということでした。また民間的発想といえども、産業分類から考えると、民間企業的変化というよりは私立大学的変化と言ったほうがいいのかもしれません。

 しかし私が以前に教えたことのある私立大学と比べると、運営システムや顧客サービス、その他様々な面でまだまだ大きな違いは存在します。

 そこで、先日、学生の視点から「(特に「顧客サービス」の面で)大学がどのようにあれば便利なのかな」ということに興味をもち、ある授業のいくつかのグループに意見(提案)を出してもらいました。すると学生の着眼や普段感じていることというのは、「なるほど」と思うものがありました。

 最も学生からの要望が強かったのは学生食堂に関する意見でした(同案件が2件出ていたにもかかわらず、投票による受講者の賛同も票割れすることなく(というより票割れしたにも関わらず)最も多いものでした)。しかし学生食堂に関しては、学外で様々な代替サービス(あまり学生は利用していないようですが)があります。今回、私が個人的に興味をもった提案は、以下の2件です。

 
 (ロッカーの希望です) 
 
 (エアータオルの提案です)

 これらは改善すると、大学の顧客満足度が確かに上がると思います。せっかくの学生視点からの素晴らしい提案なので、ぜひ学生側から大学に働きかけて、魅力のある大学にしてほしいと思います。

 また大学としても、国立大学に「民間的発想」を入ったということは、ある意味において「横並び」から「競争」へと変化することを意味します。すると「他大学の様子はどうこう」という考えに加え、「自分たちの顧客の満足度を上げる」という視点を重視して、独自の運営を目指すことで、他大学との差異化を図らねばなりません。広報、入学者水準などを重視した次年度に向けた顧客開拓型マーケティングはもちろん重要なのですが、その前提として、今の顧客の満足度を高め、大学院への継続や評判を上げていくといった顧客維持型マーケティングという考え方も必要です。能動的に顧客の潜在要求を引き出し、それを分析すると、新しい戦略が見えてくるでしょう。

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 (京都大学も秋ですね)

 一昨日23日は、京都大学に出張していました。福井大学の学生と研究員さん3名4件が、京都大学も共催するアイデア&事業化プランコンテスト「テクノ愛」の最終審査7名9件に進んでくれたからです。さすがに京都大学の最終審査会のレベルは高く、上位3件には届きませんでしたが、入賞してくれたことはとても素晴らしいことです。
 
 (この益川記念ホールでコンテストが実施されました)
 
 (前職では運営にも関与していただけにとても懐かしいです)

 京都大学の場合は、(その年や応募者のレベルによっても大きく変わりますが)ビジネスプランや研究内容のどちらかが深くても上位にいきません。研究室や大学特許をビジネスに応用するというよりは、発案者のオリジナリティを明確にしたうえで、アイデア(研究内容)を適度に深め、それを(ビジネスに向けて?)完成させるといったことが求められます。(今年の場合は)決して研究内容としては高度でなくても良いようですが、イデアと事業化の双方の軸を共に相応の水準まで持っていかないと評価が得られないようです。このコンテスト、以前よりもレベルも上がってきましたね。

 国立大学法人化のひとつの目的として、「兼職等の規制を撤廃し、能力・成果を産学連携等を通じて社会に還元」というものがあります。このようなコンテストをあらゆる大学で行い、そこから良い研究成果を社会に還元するのも効率的です。