「原発再稼働」と「電力料金10%値上げ」のどちらを選ぶ?−東京電力の会社としての今後

 本日の日経新聞の朝刊5面(13版)に出た東電記事の見出しに「東電、8兆円資金不足も」とあります。これは今後10年間で原発の再稼働がなく、かつ電力料金の値上げがなされないことが前提の試算のようです。

 同記事には、原発の再稼働」と「電気料金の値上げ」の2つを、それぞれ「早期稼働/1年遅れで稼働/非稼働」「10%/5%/なし」の3×3の表とし、それぞれの場合の資金不足額と(もっとも少なくなる時の)純資産額を示しています

 この「非稼働」かつ「値上げなし」の場合の資金不足の額が8.35兆円、その際の純資産額がマイナス2.01兆円ということです。しかしこの試算でいくと、仮に原発の稼働がなくとも電力料金の10%の値上げがなされれば、3.92兆円の資金不足にはなるものの、純資産は0.01兆円(100億円)と債務超過は免れることになります。また原発が早期に稼働した場合は、電力料金の値上げがなくとも、こちらも3.48兆円の資金不足にはなるものの、純資産は0.01兆円(100億円)と、やはり債務超過を免れる試算になっています。この場合においては最大4兆円程度の融資がなされれば、会社として存続が可能ということになります。

 独占状態では、理論上、需要量=生産量が成り立つと考えられます(余剰分の発電も需要と考えての上ですが)ので、電力料金の値上げの意味は東京電力の救済以外のナニモノでもないわけです。日経新聞の試算を信じるとすると、「原発の早期稼働」かもしくは「電力料金の10%の値上げ」のどちらかがなされれば、今後10年間における東京電力債務超過は回避できるということになります(環境負荷や電力料金の利用者負担はあるというものの、税金による補填や債権者(被災地補償を含む)の債権放棄リスクが大幅に縮小できるという考え方もできます)。

 さて、本日、別途次のような記事が産経新聞より出ています。

〜引用ここから〜

東電の公的管理促す 第三者委報告、経営責任も明記
産経新聞 9月29日(木)7時55分配信

 東京電力の資産査定や経営見直しを進める政府の第三者委員会「経営・財務調査委員会」(委員長・下河辺和彦弁護士)が来月3日にも公表する最終報告書案の全容が、28日判明した。福島第1原子力発電所事故の賠償金捻出に向けた東電の財務体質強化のため、原子力損害賠償支援機構による出資の必要性に言及。
(以下略)

〜ここまで〜

 このような公的な資本の注入となれば、既存株主にとっては、100%減資になるかどうかが最も注目すべき点となります(産経新聞の記事には「1株当たりの価値は目減りするが、『株主による協力』として、株主総会で機構による資本注入への賛成を決議するよう求めた」とありますが、目減りか0かは断言できません)。通常、企業に対する公的資金の投入において、債務超過企業に対しての場合は100%減資が基本となりますから、本日の日経新聞朝刊のニュースと、かなりリンクする部分が出てきます。

 本日前場東京電力の株価は暴落しています。産経新聞の記事だけを見ると大勢が決したように見えますが、日経新聞の記事も考慮すると、実はそのさじ加減は政府が決定するものという前に、「原発の再稼働」と「電力料金の値上げの有無」が大きなファクターになるのかもしれません。