雑感ですが埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎工事再開のニュース…

 昨年、私が当地に来たときに、大学のすぐ前に公務員宿舎があり、「これは便利!」と喜んだ…、のもつかの間、大学の方に聞くと「大学関係者は公務員宿舎に入れないんですよ」とのこと…。今は国立大学は国立大学法人格となり、大学関係者は公務員扱いとはならないとのことでした。

 しかしもちろん大学独自の宿舎があり、そちらなら入居できますよとのことでした。「それではそこで!」と思いきや、今度は近い場所は満杯、医学部キャンパスのほうが空いているとのことでしたが、そちらは今いる文京のキャンパスからは遠かったため、宿舎ではなく、大学からおよそ4km程の別の場所に住むことにしました。

 今朝、家を出る前にニュースを見ていると、事業仕分けで凍結された埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設工事の再開に関する、昨日の衆議院予算委員会のやり取りのVTRが流れていました。未だ十分な判断材料を持っていないことから、個人的には工事再開に関して、強く賛成も反対もする気はないのですが、ちょっとその国会でのやり取りが引っかかりました。

 質疑を行った議員の方が、公務員宿舎の空室率の高さを根拠として、新たな公務員宿舎の建設は必要ないと主張されていたのですが、首相の回答は「特段変更するつもりはない」とだけでした。

 そもそも空室率が高いから、新たな建設の必要がないという論理は通りません。そのように単純化されるものではないのです。公務員宿舎の家賃が恐ろしく安い「といわれている」のに、なぜ空室率が高いのでしょうか…。それでも価格が割高なのではないでしょうか。つまり老朽化や立地などのデメリットが価格の魅力を上回り、空室率が高まっている可能性もあるわけです。この視点でいえば、むしろ古い公務員宿舎の解体と新規建設の必要性が高まります

 質問する側の論拠もさることながら、回答する側も最低限この雑感程度のコメントが欲しいなぁと感じました。もちろん私はこの件に関し、十分な情報を持っていないので、何か別の論拠や視点があるのかもしれません。少なくとも多くの一般の方が述べているように、被災地の方の仮入居がすべて完了していないのに、という理由で工事の再開を反対するのなら、納得します。

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 公務員宿舎は安すぎるなどと非難する向きがあるようです。入居するか否かの意思決定に価格が重要な役割を果たしているとすれば、先に述べたように「空室率が高い」というのは「価格が安すぎる」という意見に矛盾していることになります(当たり前ですがその前提としては、公務員宿舎の部屋数が、賃貸住宅に暮らす公務員世帯数以下です)。つまりその老朽化や立地から実は割高だったというところに真実があるのかもしれません。民間の賃貸物件でも、老朽化が激しく、立地が悪ければ、実は公務員宿舎並み、またはそれ以下の安さになっているということが考えられます。

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 ちなみに私は国立、私立を問わず、大学は様々に多角化の経営をすべきと考えています。「大学の本分は研究と教育」という狭い視点からの反対意見に対しては、敢えてそのまま返します。学生時代を過ごすキャンパスにおいて、現実経済とかけ離れた非資本主義的日常があることこそ、それは教育に悪影響です。また近年の産学官連携の流れを言うまでもなく、研究の延長には当然社会への還元があります。その社会の一端である経済を見ずして、闇雲に迷走した研究だけを行うのもいかがなものかと思います。研究にとってもデメリットばかりではありません。

 なお、キャンパス内に新築のマンションがオープンすれば、もしかすると市場価格以上に高い値が付くかもしれません。特に現在のような買い手市場においては、価格は対象となる消費者がどれだけの価値を見出すかで決まりますから、一般の人以上に大学関係者が付加価値を見出せば、市場価格以上で購入する可能性は否定できません(もちろんこの市場価格以上の価値が付くのは、一部のブランド大学になります。青学大などは渋谷の坂の上、表参道すぐですから、現大学関係者のみならず、卒業生などからのほうが人気が出ると思います。ただ大学の中はさすがにそれでもイヤかな…、隣接かテニスコートなどを挟んで徒歩数分とかがいいかも)。

 大学という一つの小さな社会(昼間人口の集中)という視点、若い知恵(と場合によっては労働力^^)が潜在すること、こういったことをよく観察すると、実は大学には、研究成果や大学ブランドの活用以外にも、ビジネスの種が驚くほど多く存在するのではないかと思います。未だこういう視点で見てしまうのは、前々職の会社経営の癖ですね(笑)

(追伸)
 その後、再び凍結になりました。業者支払いのキャンセル違約等にかかる負担が40億円とのこと、民主主義のコストといえばそれまでですが、リーダーシップの欠如、優柔不断さにも問題があるような気がします。