ワザと破滅の道を進んでいるとしか思えない!?

 オンラインゲームのビジネスモデルは課金制(月額課金、アイテム課金等)ですから、制作会社には継続的な収益モデルとなっても、ソフトウェアを販売する小売店にとっては、原則として販売時にしか収益が上がりません。よってオンラインかオフラインかの決定において、その結果で小売店の反応は大きく変わります。「オンライン」となれば、小売店はネガティブに捉えるものなのでしょう。逆に考えれば、本来、スクウェア・エニックスなどの制作会社にとって、オフラインからオンラインへのゲームビジネスの変化は、継続的に収益を確保する機会になったとポシティブに考えることが可能である、と私は考えています。

 スクウェア・エニックスが昨日発表した、『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』について、「ゲームシステムがオンラインであること」「性能や普及台数に不確定要素の強いWiiUをプラットフォームにしていること(Wii版もあり)」から、市場の評価は想像以上にネガティブです。あるサイトでは、海外の声として「ワザと破滅の道を進んでいるとしか思えない」というコメントがあったとされています(この一文、かなりインパクトを感じます)。

 私は前期の学部の授業で、理論や実態が株価に反映しないことを、アナログ的なゲームを用いて説明しました。理屈や実際の業績ではなく、市場参加者の期待や不安が、需要(買い)と供給(売り)に反映されることを知る目的で行っています。昨日のこの発表、プレスリリースでありながら、短期的な反応は非常に悪く、本日前場の株価は1600円近くまで下げました(前日比約9%の下落)。

 同社は連日、ネガティブなニュースが続きます。本日、期待されていた明後日発売のソフトウェアの販売延期も発表されました。後場、株価は1600円を割りましたね。

〜引用ここから〜
 株式会社スクウェア・エニックス(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:和田洋一)は、2011年9月8日(木)に発売を予定しておりました、「Deus Ex」(デウスエクス、対応機種: プレイステーション3Xbox 360)の発売日を以下の通り変更することを決定いたしました。
【変更前】発売日:2011年9月8日(木)
【変更後】発売日:2011年10月(予定)
 本作品は、日本国内では2011年9月8日(木)の発売を予定しておりましたが、この度、日本の審査機関で禁止表現にあたる視覚的描写が1箇所残っていることが判明いたしました。そのため、該当箇所を修正する期間が必要との結論に至り、発売時期を2011年10月に変更いたします。
http://www.sqex-ee.jp/2011/09/post-82.html (株式会社スクウェア・エニックスHP)
〜引用ここまで〜

 企業業績的には、同じ事業年度内での発売ですので、大きな影響はないでしょうが、投資家心理的にはネガティブに捉えたようです。

 しかし株式市場は日々動くものです。任天堂の場合、3DS値下げの際に、一瞬大きく下げましたが、その後の販売状況から株価を戻しました。スクウェア・エニックスへの評価も、今後どうなるかはわかりません。株式市場は情報を先取りするので株価の一時的な下落は仕方がないにしても、少なくともコメントにおいては「実際に販売されてからのソフトウェアの内容、販売状況、それらを見て評価すべきでは?」とも思います。

 スクウェア・エニックスはファイナル・ファンタジーⅩⅣのオンラインで大きくつまづいたことがあるだけに、既にオンラインゲーム戦略には一定の経験値を積んでいると思います(RPG風表現ですね)。しかし一度失敗した会社に対する市場の評価は厳しいことを感じる昨日今日の出来事でした(ちなみに発売延期という点においては、十分すぎるほど経験値を溜めているでしょうが、なかなかレベルアップしないらしい^^;)。