飛ばし?〜東京スター銀行の行き先と剛腕野村證券の登場〜

 29日に「ANZ」による「あおぞら銀」の買収報道があり、当ブログでも少し触れましたが、昨日夕方、タイミングよく、以下のようなニュースが飛び出しています。

〜引用ここから〜

東京スター銀を売却へ=米投資ファンドなど
時事通信 8月30日(火)17時0分配信
 米投資ファンドローンスターなどが、実質的な傘下に置く第二地方銀行東京スター銀行を売却する方向で最終調整に入ったことが30日、分かった。既に助言役として野村証券を内定したもようで、近く手続きに入りたい考えだ。
(以下略)

〜引用ここまで〜

 東京スター銀行の株式は、2008年(譲渡の決定報道は2007年12月)にこの米国の投資ファンドローンスター」から国内の投資ファンドアドバンテッジパートナーズ(AP)」に譲渡されています。そして2011年に入ってからの報道では「アドバンテッジパートナーズ」が同社株式の取得時に受けた融資の利払いの返済ができず、同社株式の売却を検討しているという内容が流れています(2008年の譲渡時に、APは3年間は持つとか言っていたので、ちょうど3年です)。そして今年5月に再び「AP」から「ローンスターに譲渡されるという報道がなされました。そして、もう再び売却…

 そこで何が言いたいかといいますと、そもそも今年に入りAPが融資の利払いができないからと、担保権を行使して東京スター銀の株式を「ローンスター」に譲渡したわけです。この件がうまく運んだ理由として、APに融資をしていた銀行からすると、このまま利払いが滞るとAPへの融資が不良債権化してしまうことによるとも言われます。つまりそれを避けるために、株式の譲渡という形で再び融資団に引き取らせるわけです(なんかよく似た金融手法がありますよね、そうです、DES(Debt Equity Swap:負債である債務を、資本である株式に換えてしまうこと)に似ています)。

 これって、株式の評価損を隠すために、決算時期の異なる会社間で株式の譲渡を繰り返す「飛ばし」に似ていませんか(具体的には評価損が生じている株式等の有価証券を、買い戻すという前提で時価より高い価格で他社に転売することを指します。これを繰り返す限り評価損は表に出ません。しかし今は証券取引法で禁止されています。)。この場合、不良債権化を防ぐという意味なので、飛ばしとは少し性質は異なり証券取引法には触れないのかもしれませんが…、やはり似ています。もっとも実態に即した価格で売買されていれば何の問題もないわけです。念のため。

 それがまずいからという理由ではないでしょうが、再度「ローンスター」が売却を検討しています。この売却、かなり難航しそうな予感がします。というのも東京スター銀行は、2010年3月期の連結で27億8千万円の最終赤字決算、2011年3月期も46億7千万円の最終赤字決算です。2012年3月期の1Qは前年比で収益、利益ともに10%超の改善はしていますが、交渉がまとまる金額に落ち着くには、同行の本格的なV字回復が見えるかどうかがポイントになりそうです。

 そこで剛腕のガリバー、野村證券の登場です。日本の最大手、世界を代表する野村グループですから、そこは凄い知恵と剛腕でなんとかまとめてしまいそうな予感がします。やはり譲渡先の狙いは「ANZ」でしょうか。それとも野村證券のことですから、「ANZ」が日本市場を狙っていることを材料として、他行を引っ張ってくるのでしょうか。

 この話の結末、面白くなりそうです。