不思議な感覚が常識に変わる日〜えちぜん鉄道は市場創造により変貌する?〜

 いつだったかのブログにえちぜん鉄道に関することを書いたことがあります。その時は運転手さんや駅員さんだけでなく、車内にはアテンダントさんもいるというはじめて目にした光景に驚いたこと、またその一方でカナダの電車のような無人車両、無改札(無人改札ではなく改札自体がない形態)もいいのでは?という内容のことを記載していました。

 そしてここ最近、徐々にアテンダントさんの存在意義も理解できるようになりました。もちろん無人駅が複数存在することのカバーという意味もあるのでしょうが、高齢者や旅行者などへの補助としても必要な存在のようです。何よりも癒されます(笑)

 さて、先日、学内でえちぜん鉄道などの地元鉄道に関係する研究をされている方の発表を聞く機会がありました。その内容に対するある先生の質問に興味を持ったのですが、その質問とは「どうして鉄道利用者が増えなければいけないの?福井は車社会だけど、それではだめなの?もっと言うとえちぜん鉄道の乗客は増えなければいけないの?本当にえちぜん鉄道は必要なの?」というものでした。

 興味をもったのは発表内容や質問の意図というよりは、地域がもつ独自の考え方です。私は京都で暮らしていた期間が長く、またそれ以外にも東京などの都市圏での生活しか経験がありません。車を所有していますが、それでも当然、福井での最初の住居探しは「駅近」が外せない項目でした。

 その結果、住居の選定は駅から遠い大学の宿舎ではなく、鉄道駅から1分の他の場所に決めました。そのときは「運よく、駅近が空いている!」などと喜び、すぐに契約したのですが、いま改めて考えてみると、「どうして鉄道利用者が増えなければいけないの?福井は車社会だけど、それではだめなの?」という感覚が常識であるならば、駅近はあまり価値をもたないのかもと思います。

 実際、我が家から1分の駅周辺は全く栄えていません。一応、有人駅です。しかしコンビニもなければ、スーパーも飲食店もない。駅1分だから当然近くにはいろいろなものがあるだろうと思っていたものが、いざ入居して見回すと全くなかったのです。(ちなみに福井駅からの距離も、電車で10分もかからない場所です。)

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 ところで、みなさんはA列車で行こう」というシミュレーションゲームをご存知ですか?私は学生時代にこのゲームにはまっていました(というか、高校、大学ではゲーム漬けの日々で)。鉄道経営シミュレーションゲームで、パソコン画面上に与えられた街に線路をひき、車両を購入して、ダイヤを設定し、電車を走らせ、乗客から運賃を徴収し鉄道会社を経営します。このように説明すると、「あぁ、なるほど。人が密集している場所に線路を引きこんで、駅を作っちゃえばいいんだな。」と思われると思います。確かにこのゲームはそれでも黒字経営を達成できます。

 しかしこのゲームで私が好きだったのは、そのマップで人ごみの多いところに線路を敷設して鉄道事業収入を得るというパターンではなく、あえて地価の安いローカルな土地をふんだんに買い上げて、そこに線路をひき駅を作ります。そしてその周りにデパートや商業テナントを建設して、さらにバスとやローカル線との接続を駆使して、そのまわりにマンションや住宅を創るといった都市計画です。いわば駅周辺地区の開発です。

 これは市場創造型の経営と呼ばれるもので、このようにして結果的にコア事業の鉄道収益をあげていきます。ゲームといえども、経営の基本を学ぶには十分なソフトです(ただしこのゲーム、会計処理に現実との差異が存在する点は要修正なのですが)。

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 そこで話を戻します。私の中では鉄道経営の基本はこのような開発をメインとした市場創造という先入観が支配していたため(もちろん否定されるべきものではありません)、駅近を選べば種々の商業施設が集まっており間違いがない、という固定観念があったのです。しかし先日の研究発表の質問を聞いて、いままで「なぜ駅近辺が栄えていないのだろう」という疑問が、「そういうことか」という納得に変わりました。

 しかし福井という場所といえども、この市場創造型の鉄道経営が否定される要素は特に存在しません。「えちぜん鉄道の乗客が増えなければならないのか、必要なのか」という根本的な問題はさておき、ぜひ経営シミュレーションをしてみたいなぁと思っています。

 えちぜん鉄道の沿線は、未開発地域が非常に多いのが特徴です。場所によってはひたすら田園風景を走ります。私からすると、えちぜん鉄道の沿線マップを「A列車で行こう」にインポートして、市場創造型の都市開発を行うことで同社の経営にどのような変化が起こるかをシミュレートしてみたいぐらいです。ちなみにこの方法で教科書的な成功を収めたのは、言うまでもなく小林一三氏が率いた阪急電鉄です。

 同ソフトウェアの最新版は他の研究を進めている時間の関係でまだ手にしていないのですが、久しぶりにこのソフトに内在する経営学の教育要素を調べてみようかなと思っています。ゲームの中でもシミュレーションの部類は、教育への応用可能性が非常に高いものが多いですから。

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 全く話が変わりますが、本日、研究室のパキラの鉢を数ランクアップさせました。ちょうど以前に植わっていた胡蝶蘭の鉢が空いていたので。これでパキラも遠慮することなく、根を伸ばして成長できるはずです。しかしいきなりのこの鉢の大きさ、しばらくは見た目に違和感がでそうです。


      (Before)


      (After)