基本的なRPGを作ってみました〜起業とキャリアの教育〜

 新年度が始まりました。この時期は新しいプログラムや授業の開始、組織の入れ替わりと、何かと気分が引き締まります。

 昨日、本学のベンチャー企業の規定に関する打ち合わせが行われ、担当の先生や職員の方と打ち合わせをしていました。そこで改めて「大学発ベンチャー」の定義付けを考える機会がありました。

 全国の大学の規則を見てみると、狭義ではMOT(技術経営)を軸においているようです。つまりその定義が「大学の教職員や学生が有する知的財産をもとに起業」する場合や、「大学で達成された研究成果をもとに起業」するという場合に当てはめるということです。

 一方で広義では、「大学に在籍しているもの」や、「大学にて起業関連の授業を受けたもの」が起業する場合、または「大学関係者」が深く関わった会社の設立も大学発ベンチャーとしています。

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 日本の大学は前者のパターンのほうが多いように感じたのですが、これは「日本の大学が考える」ベンチャー企業像と関連しているのかもしれません(なお、国際比較における「大学が考えるベンチャー企業像」が異なるだけではなく、日本国内においても「大学が考えるベンチャー企業像」と「一般で考えられている(ITベンチャーのような)ベンチャー企業像」もまた異なります)。

 日本における起業教育(起業家教育)は、米国のMBAプログラムと比較すると、啓蒙的な内容の割合が多いようです。「いますぐ」起業するためというよりは、その準備のための講義、つまり講師の話を聞き「起業とはそういうことか」と理解する内容です。日本の多くの大学に設置されている経営者によるリレー講義やベンチャービジネス論(ワークショップではなく講義)などはこの典型です。

 その一方で、いわゆる米国のMBAプログラムでは、いますぐにでも起業するために何をするかを前提においた「教員を中心とした受講者による能動的授業・双方向授業」です。たとえばワークショップのように実践を想定した授業が行われています。つまりMOT(Management of Technology)に重点をおくよりは、Business StartupやEntrepreneurship、Market Creationを柱にしています。

 このように考えると、米国の教育は「研究成果と実用化」という垣根を意識するよりは、起業ありきの考え方で進んでいるということになります。一方で多くの日本の大学講義の場合は、啓蒙的な内容ですから、いまは研究内容であるけどもそれを実用化するときにはこのような起業の知識が必要ですとか、創業や事業の苦労話と経験を知るというような内容が話され、自然と「研究成果と実用化」に隔たりがでます。

 このような教育の違いから見ても、日本における「大学発ベンチャー」の定義を狭義なものにしている原因は、「研究成果」にこだわっているからといえます。昨年5月のVBLフォーラムでは、「研究駆動型のベンチャーを育てるというよりは、広く様々な領域で起業が行われる中で(ベンチャーの数を増やす中で)、そのようなベンチャーが生まれるという時期にかわりつつある」という締めをしています。日本における「大学発ベンチャーも、広く様々な分野における起業を含む方向に向かうべきといえます。

 もちろん私はMOTにこだわった起業の研究をしているわけではなく、起業全体についての教育方法やあり方を考えています。その中で、起業教育の要素として、やはり「能動的」であるとか「双方向」というキーワードにこだわります。知識という素地がない中でアウトプットを求めるということではなく、インプットとしての知識を学ぶ過程において、教員が一方向に知識を伝えるのではなく、受講者の能動性が必要だと感じております。一昨年もそのような学会報告をいたしました。

 そして今年はその研究内容をより前に進めようとしています。また6月の英国の学会でも具体的方法に触れる予定です。一昨年のカナダにおける学会では、現地における能動的な取り組みを数多く知りましたので、今年は日本のお家芸?であるデジタルゲームによる方法を説明します。

 というのもデジタルゲームは、自らコマンド入力を行う必要があります。つまり能動的アクションを要求されます。その逆の受動的なパターンとして、映画などの映像教材があげられます。いわば映画は教員による一方向的授業と例えることができ、デジタルゲームは自主的な学びの要素をもつ可能性があるということです。

 このよな能動的な要素を学習に取り入れることで、ゲームと教育の境界もいずれ失われていくと思います。

 
 (取り急ぎ、まずはこのようなたたき台のゲームを作成しています)

 これはRPGを作成するソフトウェアを用いているのですが、RPGというと戦闘が中心になりがちです。しかしその中に(場合によっては戦闘を排除して)、生産と販売、流通、事業の開始、アバターの成長、その他、様々な起業教育、キャリア教育の要素を加えることが可能です。

 ちなみにゲーム作り、ときどきトリガーやラベルなどを設定し忘れて、テストプレイをすると、俗に「嵌り(はまり)」と言われる状態に陥ります。しかし、こまごまとした作業や分析、計算が好きな私には向いているかなとも思っています。

P.S.
 先日どなたか録音をされてませんかとお聞きした、28日のFM福井に出させていただいた内容につきまして、録音したCDをいただけました(感謝!)
 あと本学の授業の市民開放枠の件、既に25日に締め切られたそうです。失礼しました。また本学学生以外に市民開放枠で何名か受講のお申し込みをいただいているようです。開講日を楽しみにしています。