経済市場はかくも非情で、しかし効率的なものなのか・・・

 経営や経済を研究していると、現代社会はその考え方の多くがベースになっていることに気付きます。経済や経営の理論は現代社会に「合わない」(「使えない」)といわれることもありますが、それは経済学において前提となる条件を数多く固定するため、現代社会の諸場面と合致しない(純粋に適用するには少々無理がある)ためです。

 このような経済や経営の理論が、現代社会のベースに適合することを知ったときは、小さな感動を覚えるときもあります。しかし残念ながら今回の週末の地震の件では、私はその逆の感情、つまりショックを受けました。

 3月11日(先週の金曜日)の14時46分に東北地方を震源とする大地震が発生しました。観測史上で最大となるマグニチュード9.0とのこと、さらに表に出ている情報だけをとっても、時間が経つにすれその深刻さを増しています。

 経営学ファイナンス科目を受講すると、Eugene F. Fama(1970)が唱えた効率的市場仮説(EMH)を学びます。簡単に述べると、複数の前提を規定した上で、「企業に関するニュースは直ちに株価に織り込まれるため、常に適正な株価が形成されている」というものです。この考え方を元にすると、市場をビートする(他の投資家を出し抜く)運用は理論上は不可能であるということになります。その結果、個別銘柄を選別して投資するのではなく、インデックスファンド等に投資するパッシブ運用が支持されることになります。

 またFamaはこの考えから、市場が効率的かどうか(情報が価格に織り込まれる度合い)に関し、3つのレベルを設定しました。

 そこでこの仮説が、今回の地震で私が感じたショックとどのような関係があるかということを説明します。実は金曜日の東京証券市場では、情報の反映がとても素早かったといえます。東京証券市場が閉まるのは金曜日15時ですが、地震発生からの14分、この引き際の一部銘柄の動きが凄かったのです。

 私は夜にチャートを見て知ったのですが、14時50分台、新潟を地盤とする某建設会社銘柄、道路建設関連面柄は成行と見られる買いで急騰、その一方で電力株は急落しています。

 この動きを見て、情報の折込の早さに感心するというよりは、14時46分から14分間でよくここまでの行動ができたものだと思います。人間の思考と判断、行動力に驚きです。このような状況で、売買注文を冷静に出せる人、「よく言えば」その判断力に対し、複雑な心境を持ちます。それがプロだと言われれば、そういうものなのでしょうか。

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 被災地付近の方々のことを思うといたたまれません。私が所属するいくつかの団体でも義援金を中心とした活動を行おうとしています。具体的な手助けが出来ないという悔しさを感じる人も多いと思いますが、遠くでも出来ること、いま各個人が出来る範囲のことはいくつかあります。小さなことでもその1つ1つがきっと役に立つことでしょう。