「信長の野望・天道」〜オフラインコンテンツの思考ルーチン!?〜

 「信長の野望」の2010年リリースのオフラインバージョンは「信長の野望・天道」といいます。昨年来、買おう買おうと思っていていたのですが、プレイする時間がとれず、買わないまま2011年に入ってしまいました。しかしこの日曜日、やっとPS3版を購入し、少しプレイをしてみました。

 このシリーズは私が中高生のころ、ファミコンスーファミのどちらかでプレイして以来、ほとんどのバージョンを経験しています。当初はターン制(季節や月ごとにコマンドを入力するシステム)だったのですが、今では時間が流れるようになり(正確にはフェーズが細かくなり、自動的に次のフェーズに切り替わるようになっているのでしょうが)、流れを止めた戦略フェーズでコマンドを入れます。

 シリーズ化されたゲームでは、本来、何作もバージョンを重ねると、ユーザーであるプレイヤーが玄人化してきます。すると制作側もユーザーの要求に応えようと、より深みのあるものを作りこみます。

 その結果、すべての面において複雑になり、たとえばPC版のFFⅩⅣ(ファイナルファンタジー14)の発売当初のように、UI(User Interface)がとんでもなく悪く、逆効果になることも時にはあります。しかしこのシリーズを久々にやってみた感想は、しっかり作りこまれていながら、それでいてUIは良かったというものです。また領地支配の方法に街道という概念を加え、前作の1枚マップの内政システムに、さらに道を作れるという自由度が加わり、飽きを感じない新しさもありました。

 しかしオンライン対戦でないため、競争相手がコンピュータである点が、この作品をはじめ、多くのオフラインゲームの限界です。コンピュータの思考ルーチンが読めてしまうと、ゲームの楽しみが減ってしまいます

 プレイし始めて1時間、気づいたことは、多くの兵で出陣しなくとも(相手と戦わずとも)領地を広げられる(村落を支配する方法がある)というものです。それはある村落を支配したければ、自分の領地を出てから支配したい村落まで、相手部隊よりも自陣の工作部隊が先に辿り着くこと、たどり着いた瞬間、その村落を含む周辺が自国領となり、相手部隊は攻撃のための進行をやめ、一旦城に引き返します。つまりたとえコンピュータが迎撃に出てきても、こちらは多くの兵を引き連れてなくても良いというわけです。

 相手がコンピュータではなくプレイヤーであれば、そうはいきません。村落をとられても、目の前に敵がいるわけですから、そのまま攻撃をすると思います。きっとプログラムでは、「『自分の』領地に敵が入ってくれば、味方は迎撃に出る」となっているのだろうと思います。ですから自分の領地が敵の領地になった瞬間、命令が変更されるのでしょう。

 コンピュータゲームのプログラムは、大概、ミクロ経済学ゲーム理論でも出てくるmini-max戦略で組まれています。被害が最小になるような選択をするようになっています。たとえば(選択肢1)は相手に10、30、40のいずれかのスコアを与えてしまい、(選択肢2)なら相手に5、10、50のいずれかのスコアを与えてしまう可能性があるとすれば、50という一番大きな害を被らないように(選択肢1)を選ぶというものです。

 こういうことを知ってしまうと、シミュレーションゲームロールプレイングゲームが得意にはなっても、面白味は減ってしまうわけですが…。

 何はともあれ、このような点は現状の対コンピュータICT教育の限界にも通じます。対人の対応能力をつけること、つまり私の研究領域でいうと「生きた経済」を実感するには、コンピュータプログラムが相手では、入力に対する出力が予め設定されていて、どうしても学ぶ内容が閉鎖的になってしまいます。(もちろん教科書で学ぶ経済も同じことです)

 しかし同じゲームや教育でも相手が人間であれば、入力に対する出力は様々です。ここにMMO(Massively Multiplayer Online Game)といわれる多人数のオンラインゲームによる「広がりのある」教育への可能性があると考えています。

 ちなみに今回の「信長の野望・天道」に関して、ひとつ要望があるとすれば、「自分の領地に敵が入ってくれば」というIF(仮定)に対し、その対応するアルゴリズムをランダムで数種類用意しておけば面白くなると思います。基本の選択肢は「(敵部隊を壊滅される程度の数で)味方は迎撃に出る」として、さらに(andで)「敵陣には攻撃しない(敵陣に変わった瞬間、攻撃をやめる)」だとしても、例えばその他にも「そのまま攻撃を続ける」「その場で待機し様子をみる」「応援部隊をさらに派遣する」「奇襲モードに入る」その他をランダムに選ぶ可能性をもたせておくということです。そうすれば、少なくとも私みたいなコンピュータの行動を読んだセコイ(笑)戦略を組むことはできなくなるでしょうから。

 毛利家ではじめた四国・中国統一戦(中級)ですが、こんな方法で長宗我部家、三好家の四国部隊の攻撃を交わしつつ、ものの2〜3時間で宇喜多家、尼子家を中国地方の隅に追いやっています^^。