亀山社中(検定@京大)とスマートグリッド(実践道場@福大)の件

 意外にも亀山社中」に引っかかるか…(^^;;

 先月、京大で行った起業能力検定試験の採点がおわり、先週、2月10日には合否判定の打ち合わせも終了しました。25日の合否通知発送前ではありますが、もう試験も済んだので公表は問題ないだろうということで、少し触れます。実際の受験者168名(申込者185名)に対し、合格認定者133名、認定率79.2%です。最高点が96点で最低点が36点、認定ラインは当初の公表通り60点です。

 問題を作った立場で私が問題の難易度を主観的に判断するのと、まわりの人が客観的に問題の難易度を判断するのとでは、若干の相違があったことは事実で、実際に私が作った問題は「難しすぎる!」という事前評価でした。それでも「79.2%が60点をとったじゃん!」ということで、正直、ホッとしているのですが、個別問題の正答率で驚いたことがありました。

 それは、私を含め研究に関係する先生方が難しくないと判断した以下の問題の正答率が24%という結果だったからです。その問題とは…。

Ⅰ−16.
 日本におけるはじめてのベンチャー企業といわれることもある「亀山社中」に関する次の文章のうち、正しくないものを選びなさい。
① 現在の商社のような仕事をしていた。
② 坂本龍馬によって結成された。
③ 後の海援隊の前身となった。
④ 三重県亀山市を本拠地にした。

 もちろん「正しくないもの」は④です。長崎県の亀山地区が正しいのです。この問題が最も正答率が低かった理由…、考えられることは、ひとつは事前配布のテキストからの範囲外の問題であったことです。テキストからは50問中42問を出題しており、テキストの内容以外からは時事問題や教養的な問題を8問にしています。この問題は、その8問のうちの1つです。

 もうひとつ考えられる理由は、受験者の中で小学生が多かったことでしょうか。小学生から一般の社会人まで受験していただいていますが、学校単位の団体受験校での正答率が低かったのは事実です。大人目線だと④が間違いというのは、おおよそ見当がつくのですが…。

 そのほかに正答率が高くなかったのは、正誤判定問題の、

Ⅱ−5.
 利益とは、モノを売った値段から仕入れた値段を引いた差額のことである。

というものです。なんと正誤判定問題にもかかわらず、正答率は27%です。答えは×で、テキストにもその他の費用の説明をいれていました。もっとも基本レベルを想定していたので、営業利益や経常利益、当期利益の違いまではテキストでは触れていません。この問題の正答率が低いのは想定通りではあるものの、正誤判定なのでもう少し高めを考えていました。

 何はともあれ一区切りつき、大役を無事終えたというホッとした心境です。

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 今日はさきほど、本務校の実践道場の「プロジェクトインキュベーション」という授業の一環で、ある博士課程の学生さんに課題の説明をしていました。その方は、スマートグリッド周辺機器の研究開発をされていたので、このプログラムを統括する教授が「その研究内容を製品として売り込むにはどうするか。」というテーマにしようと決定されました。私は専門が経営学の分野なのですが、ちょうど前職でスマートグリッドの実用化のプロジェクトに関わっていたこともあり、その方向性を少しアドバイスしました。

 課題に対し私が期待するレポート内容は、スマートメーターで何ができるのか(発展性、応用など)どのような会社が参入を考えているのか(電力会社以外のビジネスの拡張性)現状の普及に関する問題点の抽出(特に日本における)EV市場との関係性デマンドレスポンス(経営学的には気になるところです)AMI(Advanced Metering Infrastructure)を軸とするソリューションなどです。こうやって書き出すと、完全に経営経済学視線になってますね^^;;

 今日は最初なので、ここまで細かくは伝えていませんが、工学を専門としてスマートグリッド周辺機器を専門とするドクターの方がこのような産業化に関係する視点を持たれると、業態柄、自ら起業とはいかないまでも、日本の産業界に少なからずインパクトを与えることができると思います。

 特に日本とアメリカのスマートグリッド普及の背景の違いとして、アメリカは今までが電力検針等で効率的ではなかったため、スマートメーターの導入は価値があるのに対し、日本は今までの検針が問題となるほど非効率ではないため、導入のメリットが少ないという点が、方々で指摘されています。「今までは効率的だったから、新技術を国家レベルで導入する動機になりにくい」って何か逆説的というか、矛盾していますよね。アメリカから見れば、不幸中の幸いみたいな感じでしょうか。

 日本企業が勝ち残るためにも、様々な専門を持つ人が異なる視点から、現状を分析することはとても大切だと思います。来月期日のレポートを楽しみにしています(^^)。