消費者に誤解を与えるビジネスの乱立について!(警鐘)

 グループ購入サイト(「グルーポン」など)が二重価格表示の可能性などの問題で注目を集めています。

 二重価格表示とは、実際の販売価格とは別に、比較対照価格といわれる価格を提示することです。例えば「通常販売価格20000円のところ、今回は5000円で販売!」などという場合です。もちろん相当程度の期間(過去2週間以内を最後の日として、実際に2週間以上のその価格での販売実績など)、その定価で販売されていた実績があれば何の問題もないのですが、グループ購入サイトのおせちの場合は、その比較対照価格の根拠に疑いがあったため、問題となったわけです。

 そのほかにも「メーカー希望小売価格」という言い方をする場合もあります。こちらもそれが事実であれば問題はありません。

 しかし実績がなかったり、事実でなければ、景品表示法に引っかかります。

 このような二重価格表示にはきちんと法律が整備されているのですが、「これ、問題にならないのかな?」と思うのが、ペニーオークションです。

 ペニーオークションとは、(コインなどという形に変えて)1入札ごとに75円程度の手数料を支払い入札するオークション形態です(その手数料は、あくまで「手数料」という名目なので、落札できなかった場合も手元には返ってきません)。たとえばメーカー希望小売価格20000円程度のN社の据え置き型ゲーム機が、一見すると5000円程度で買えてしまうように見えることがあるのです。

 この話だけを聞くと、出品者であるオークションサイトの運営者は無理をしているように思うのですが、実は運営者にとっては多額の利益になります。このオークションが5円刻みの入札方式の場合、0円スタートで最終的に5000円の価格になるには、1000回の入札が行われることになります。つまり運営者には、5000円の商品代金に加え、1000回×75円=75000円の手数料が入ってきますから、メーカー希望小売価格20000円の商品に対し、合計80000円のお金を手にすることが出きるわけです。あくどい場合には1円刻み設定などという場合も…。

 ただ私はここで運営者が儲かることに問題があると言いたいのではなく(もちろんビジネスにおける倫理性は大いに問題ありですが…)、消費者が先述の二重価格表示と同様に「このサイトでは20000円の商品が5000円で買えるんだ!」という誤った認識をしてしまう恐れがあることを危惧しています。5000円で買える(正式には、プラスすることの手数料)というのは、消費者自身が落札者となった場合にのみ、現実となるものだからです。

 当たり前のことですが、運営者に80000円が入るということは、その80000円を誰かが支払っているわけです。落札した消費者が10回の入札で手に入れたとすれば、この消費者は5000円+75円×10回=5750円しか支払っていませんが、残りの74250円は落札できなかった入札者が、何の対価となる商品も得ずにただお金を失ったことになります。

 このビジネスモデルに対しては、規制をかけるべきであると私は考えています。このように言うと業者に対してかということになりますが、私の考えはそうではなく、消費者に対する参加への制限という意味です。

 例えば、株式の信用取引を初心者が行うことには慎重にならねばなりません。リスクを認識できていない可能性があるからです。相応の株式売買の経験が必要でしょう。同様にこのようなサイトへの参加に関しては、特別なオークションの仕組みに対する理解、リスクの認識が十分な場合しか、参加すべきではないのです。それは参加するIDを得る前の、簡単なテストでも構いません(少なくとも現状の、「同意する」ボタンだけよりは、断然ましです)。

 上記の商品の例の場合、参加者平均の期待値でいえばメーカー希望小売価格の4倍の金額で購入していることになるわけです。しかしこの商品の入札に参加した人のどれだけが、平均的に4倍の価格で購入していると認識しているのでしょうか…。手数料のこともあまり考えずに、「4分の1で購入できるんだ!」なんて思っている可能性もあります。

 このようなビジネスモデルを政府が容認するならば、少なくとも我が国ではもっと消費者に対する金融経済教育を徹底して実施しなければいけないでしょう(私の研究分野への我田引水ではありません…)。

 ペニーオークションの収益モデルを見ると、その昔、「法律を守って金儲けをして何が悪い。」と言い放った、あの某ファンドの経営者を思い出します(笑)