イデオロギーの経済学!?

 今朝、家を出る前にニュースを見ていると、「阿久根市のリコールの是非を問う請求」と「市川海老蔵氏が受けたとされる暴行事件」の2つが話題を占めていました(今日も日本は平和だw)。後者はさておき、阿久根市の件では投票率77%だそうです。みなさんはこの数字が高いと思いますか?一部の報道で、同市民が今回の選挙に「関心が高い」と述べていましたが、私は「それはどうかなぁ」と思います。

 絶対的な評価で数値を見れば高いのは間違いではありません。しかし私は意外に低かったのではと思っています。

 人間の合理的行動に基づけば、仮に2万人の有権者がいる都市での投票は、自身の投票が与える影響は僅かです。投票率75%、投票の価値が1万5千分の1しかないと考え、投票に行かないかもしれません。しかし阿久根市のこのリコール請求選挙では、結果がどちらになるかきわめて微妙な状況でした。賛成派と反対派が7000、7000で割れていた場合、5000票は非投票として、残り1000票で結果が決まります。そのような場合は、残り1000票が結果を左右するわけですから、その影響は1万5千分の1ではなく、1000分の1になります。

 つまり何を言いたいかというと、僅差で結果が決まるという場合は、投票率が高くなるのが当然であり、その上で77%が高いのか低いのかということです。少なくとも2009年同市、市長選挙の82%よりは低いわけです。

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 結果的に僅差でリコールが成立した形ですが、今回の選挙に関しては実質的に市長の勝ちではないかと個人的に考えています。選挙では票を得たいばかりに、中立的なイデオロギーを唱える候補者が多いものです。

 極論を唱えるよりは、中立的な意見のほうが得票できることは、「ホテリングのビーチにおけるアイスクリームベンダー問題」(Hotelling's " ice cream vendor on the beach" problem)により説明できます。

 いま2人のアイスクリーム売りAとBが海辺のビーチで商売をしようとしています。2人は同じ価格で同じものを扱っており、価格を変更することは禁じられています。しかしこの一直線の有限な範囲のビーチの中ではどこで売ってもいいとされているとしましょう。また顧客に関しては、この有限なビーチに均等に散らばっていて、最も近いアイスクリーム屋台からアイスクリームを購入するとします。

 このとき2人はビーチのどの位置で販売すると最も売り上げを伸ばすことができるでしょうか。

 AがBより左に位置すると仮定して、Aが既に立地を決めてしまっている場合、Aはその左側のすべての顧客に販売をすることができます。このときBはどこに位置すればよいかというと、Bはその右側のすべての顧客とBの左側はAB間の中点までの顧客に販売することができます。よってBはAに近づけば近づくほどAの顧客を奪うことができますから、この場合BはAの真横で売ることが最適戦略となります。

 

 これはAについても同じことがいえ、やはりBの真横で売ることが最適戦略です。結論として、A、Bともにビーチの真ん中で販売することがお互いにとっての最適戦略を満たすことになります。つまりAもBもビーチの真ん中で隣り合って販売するというのが一番いいということになります。

 

 これを選挙に応用した場合は、二極対立するイデオロギーに対し、どちらかに偏った考え方を示すよりは、その真ん中に近いものを示すほうが得票できるとされています。

 このような話からすれば、あれだけ極端な意見を主張しながら、僅差にしたというのは、なかなか大したものだと思います。