パーソナル・アイデンティティの説明も苦手?

 先日、関西へ仕事をしに行ったときに、京都大学内のレストランで食事をしました。そのとき、今までは全く気にも留めなかったあるメニューが気になり、注文したのですが、それは・・・。
 
 このビール、京都大学早稲田大学が共同開発したものです。ルビーナイル(赤いラベル)が黒ビール的で高アルコール、ホワイトナイル(緑のラベル)が普通のビール的(麦が特別らしい)、ブルーナイル(青いラベル)がフレーバーのある発泡酒というもので、ブランドは統一していますが中身は全く違います。

 昨年までは毎日京大に通勤していたので、このビールの存在は知っていても、お店で注文をしたことがなかったのですが、職場が変わると気になるものです。また不思議なもので、このように綺麗なラベルが貼られ、大学が開発したビールというだけで注文をしてしまうということが、まさにブランドの話そのものだなと思いました。ブランドは消費者の心の中に生まれる、とはこのことです。気にならない人には、他のビールと同じであり、あえて価格が高いこのビールを購入するということはないですから(経済学的には)。特に私のようなお酒を好まない人間にとっては、味はわかったものじゃないです^^

 そのような意味では、大学というブランドは産学連携において非常に高い価値をもつものになります。大学発ブランドにより、このビールは独占的市場を創り出しています。

 1年半前に金融経済教育に関する国際学会の発表で、カナダのkelowna市にあるUniversity of British Columbiaのキャンパスにいったとき、受付登録の際、バッグやマグカップなど、多くのUBCの大学グッズをいただいた記憶があります(いただいたといっても395カナダドルの学会参加費は支払っていますが^^;;)。日本でもいくつかの有名大学では取り組みが始まっていますが、きっと今以上に各大学で大学発ブランドの開発を推進すれば、大学の卒業生だけでも相応の市場が見込めるでしょう。

 
 
 (Kelowna市のUBCです)

 私の青年会議所の知り合いにも多くの製造業企業役員の方(特に食料品関係)がいらっしゃいますが、そのような開発の話に興味をもたれる方が多いのも事実です。ちなみにこのビールの売り上げ1本につき、大学には10円が入るということです。京都大学早稲田大学ともに、100万円/年 近くの大学への収入になるとのことでした。

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 先月、ナショナル・アイデンティティの欠如というブログを書きましたが、では我々日本人はパーソナルアイデンティティを説明するのは得意かというと、そうでもなさそうです。

 起業ではなく、また中小企業、ベンチャー企業への就職ではなく、大企業や中央省庁への就職を好む日本人は、そのブランド好きといわれる特徴に共通するものがあるのでしょうか。

 こんな話を聞いたことがあります。海外の多くでは、住所を小さいほうの「番地、地域(通り)、市、地方、国」の順に書くのに、日本ではその逆で、大きいほうから書いていきます。これは日本人がビジネスの場でなくとも、初対面の人には所属している会社の説明をしたりするのと共通していると。

 一瞬「?」ですが、どういう共通点かというと、日本人が自己紹介で個人の特徴ではなく所属を説明するという点が、住所の書き方にも表れるということです。自分が好きなものは何で、何が得意かという内容をパーソナルアイデンティティといいます。日本人ではこのパーソナルアイデンティティを主張するのが苦手とみられるようです。島国だからでしょうか。もしそうであれば、もう少しナショナルアイデンティティが強くてもいいようなものですが、そこはどうも整合性がとりにくいですね…。

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 話変わりますが、11月15日のKBS京都の夕方のニュースを録画されていた人っていませんよね…。複数の人から連絡をいただいたのですが、15日の記者発表が流れ、私も映っていたそうなのです。