「○○」を経験したもの同志にしか共有できない気持ち!?

 1.「○○」をした者にしかわからない感覚、2.「○○」をしたもの同志しか共有できない考え方と同調、3.「○○」をしたものにしか感じない「○○」をしたものの言葉の裏にある想い、というのが存在するものだと思います。「○○」には様々な言葉が入ると思いますが、ここに私は「起業」という言葉を入れてみたいと思います。

 今朝、何気にYahoo!のトップページを開くと、「ひろゆき、安易な起業に苦言」なる小見出しが出ていたので、目を通してみました。「ひろゆき」というのは、ご存知の方も多いと思いますが、「2ちゃんねる」という日本最大の匿名掲示板の元管理人の方です。そのYahoo!からのリンクには、同氏が今年3月に記載したブログ「若者に起業を勧める嘘つきな大人たち」の再紹介の記事がのっていました。このブログのタイトルを見ただけで、上記1.2.3.の「起業」バージョンに私のスイッチが入りました。つまり一瞬にして、同氏が何を思い、何を主張しようとしているのかが、直感的に理解できたわけです。

 同氏は、若者に安易に起業を勧める大人を非難し、そのような大人は、(ここから同リンク先サイトの引用です)「A『現状の社会を良く知らない、社会経験の足りない人』(学校の先生やライターなど、起業して成功した人の話を聞きかじって起業の成功率が高いと思い込んでいる人)B『会社員・公務員など、事業家ではない社会人』(起業して、お金を稼ぐよりも、会社員のほうが安全というのをわかって会社員を選んでるにもかかわらず、他人には起業を勧めるという無責任な人)C『起業を勧める事業家』(コネも資本もない若者に出来て、利益が見込める事業なら、事業家は既にその仕事を手がけているはず)」(引用ここまで)とのことです。

 私個人としては、ここまで挑発的な言葉遣いや断定はどうかとも思いますが、同氏の意見に大筋では賛同します。ただ少し補足をすると、同氏が述べるAに関しては、実際にやってみないとわからない部分が多いのも起業です。ですから社会経験というよりは起業体験ですね。Bは、今の日本社会においては、会社員のほうが人生における収入を含んだ種々の期待値がはるかに高いと思われるので、むしろその人々のほうが賢い選択をしているのかもしれません。日本社会では起業環境が整っていません。Cに関しては、やや異論があり、人によって事業リスク・リターン志向は異なりますから、何とも言えません。また、例えば若者だから、女性だから、そのネットワークを活かし成功するビジネスモデルもあります。ですが、同氏が言いたいことはよくわかります。

 繰り返しますが、同氏の言葉遣いは少々挑発的かもしれません。しかし「起業はそんなに甘いものじゃない」ということを身をもって体験をしてきたものからすれば、起業を安易に進める人々の言動には苦言を呈したい気持ちはとてもわかります。正確には、「起業」というよりは「会社経営」という言葉が適切かもしれません。それゆえ私が起業教育研究をはじめた目的も、いつも述べることですが、「起業家をつくるのも結構、しかしその前に起業をしたいと思う日本社会を作ること、そのような風土を作ること」です。

 そのためには、既に実施されているような、起業を助成する経済政策、法政策だけではなく、起業家を育てるような社会づくりとしての教育政策が重要です。