What does retrospective cohort study find? ‐ う〜ん、基本的に何を食べても栄養になるのでは?


(家族も揃った「わが家のウサ公ファミリー」、とうとう自家用車がきました!)

 福井のいいところは、至るところに「広い」公園があるところ。しかし福井に限らないのかもしれませんが、「砂あそび場」が意外にも少ないです(畑は多いので、そこでやれということか?(笑))。

 先週の日曜日は、娘が張り切って砂遊びセットを持ってきたので、「じゃ、公園に行こうか」ということになりました。張り切りついでに、いつもの近場の公園をパスして、少し歩きます。4つの公園を回りましたが、どの公園も滑り台とブランコはあるものの、砂遊び場がありませんでした。

 今日はリベンジです。砂遊び場のある一番近い公園に行きました。今日は満足したようです。

 私が砂遊び場にこだわる理由は、砂でものを作る創造性と、作ったもので行うごっこ遊びによる情操など、昭和の子どもたちがやっていた学びを伴う遊びができるからです。もちろん大型遊具を使った遊びも、運動神経や空間認識などの様々な学びがあります。

    
 (トランクもあり、チャイルドシートも付けることができます。ナンバープレートを引っ張り出すと、バーベキューテーブルになったりと、充実したファミリーカーセットです。少々車がレトロなのは、仕方がないとしましょう…。30年の歴史ですから。)

 さて家の中の遊びですが、「はじめてのおうちセット」「ウサ公パパ」「ウサ公赤ちゃん」「お風呂セット」「ウサ公ママと豪華キッチンセット」の次は…「ファミリーカー」を買ってみました!最近、娘(よりも私?)が興味を持っているウサ公(シルバニアファミリー)シリーズですが、その教育効果について、少々書きたいと思います。同シリーズを製造販売しているエポック社のホームページに、それらしき説明が述べられていました。

 同社の説明によれば、情操教育に効果があるとされています。例えばNEO-FFI(NEO Five Factor Inventory)の「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実」の5つの区分のうち、外向性や開放性、誠実性について、シルバニアファミリー経験者と非経験者では、前者のほうが高い検証結果を示したとしています。

 確かにウサ公の世界観から、それらの効果が生まれるのは理解できます。ただ調査方法はいいのですが、その結論の出し方に少なからず強引さを感じました。それはNEO-FFIの項目に焦点をあて、日本の20〜25 歳の未婚・社会人女性について「幼少期にシルバニアファミリーで遊んでいた群」200名と「幼少期にシルバニアファミリーで遊ばなかった群」200名のそれぞれのNEO-FFI得点を比較するという、基本的な後ろ向きコホート調査でした。その結果、前者のほうが有意に数値が高いということから、同社製品のアピールがされています。

 少し考えれば誰でも気づくのですが、何を食べても何らかの栄養になるという理屈と同じで、この調査結果は同社製品の優位性を示すものではありません。食べた人と食べなかった人では、食べた人にはその分の栄養が追加で摂取されるのと同様に、やらなかった人とやった人を比較すれば、やった人にその経験値が貯まるのは当然です。数値結果を出されると、そうなのかと思いがちですが、他の玩具との比較を行ってどうなのか、またそもそもウサ公を好む子どもの集団が、もともとその得点が高い子どもだったということも考えられます。さらに私のように、親が敢えてウサ公を選んで与える家庭の特性がもともとその得点が高くなりやすいという可能性もありますね(情操の効果を狙って様々なものを試している可能性が高いわけですから…)。

 ちなみにこの「後ろ向きコホート調査(retrospective cohort study)」とは何かということですが、コホート調査はメインの「前向きコホート調査(prospective cohort study)」とこの後ろ向きものの、2つに分かれます。コホート調査自体は、原因と結果の関係性を探る調査法で、「ウサ公で遊ぶ」という原因が「情操教育に効果がある」とする結果につながるかどうかということです。

 では「前向き」と「後ろ向き」ってなんじゃ?ということですが、「前向き」の場合は、ウサ公で遊んでいる集団とそうでない集団に対し、将来、情操教育の効果が出るかどうかを比較調査します。時系列でみて、(例えば現在を起点に)未来にベクトルが向いているということで「前向き」といえばわかりやすと思います。

 「後ろ向き」というのがこの例の場合ですが、過去にウサ公で遊んでいた集団とそうでない集団に対し、現在の情操教育の状況を比較調査します。(例えば現在を起点に)過去に遡っているので「後ろ向き」と訳されてしまったのでしょう。本当は、"retrospective"とは過去に遡るという意味ですから、実質的な調査方法からしても「回顧的コホート調査」という日本語にしたほうが正しいと思われます。

 さらに医学の研究とかで、ケースコントロール調査(結果対照研究)という、やはり回顧的(後ろ向きとされる)方法が使われることがあります。これは、その言葉そのものですが、「情操教育の得点が高い」という結果の人々を集めて、その人々が「ウサ公で遊ぶ」という原因を経験していたかどうかを調べますね。

 私が主とする政策科学分野では、様々な事象に対し、このような効果検証を行っていきます(代表的なのが国や地方自治体等の政策効果検証)。そのため、それぞれの調査方法の違いを正確に把握していないと、間違えた結論を導きかねませんので、どうしてもこのような調査を見ると、敏感になります。

 時折、「データの見せ方によって説明のやりようはいくらでもある」などという戯言を聞くことがありますが、そんなことはありません。行政データも怪しいまとめをされていることがありますが、見るべき人が検証すれば、正しいか誤魔化しかは簡単に見抜けますよ(^^)。もちろん私はウサ公セットの教育効果に肯定的です。